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上陸


「すごい霧ね。前が見えない!」

 ナルト達は波の国行きの小舟に乗っていた。
河の周辺は濃霧が漂い、遠くは全く見えなかった。

「そろそろ橋が見える。その橋沿いに行くと波の国がある」

 船頭の男性がそう言うと、濃霧の中から見上げる程の大きさの橋が現れた。しかし橋には先が無いからまだ建設途中のようだ。

「うひょう!でけェーー!」

「コ...コラ!静かにしてくれ!この霧に隠れて船出してんだ。エンジン切って手漕ぎでな。
ガトーに見つかったら大変なことになる」

 船頭に怒られたナルトは慌てて口を塞ぎ、サスケとサクラは辺りを警戒して辺りを見回す。

カカシはガトーという名を聞き、先程のタズナとの会話を思い出していた。




「先生さんよ、ちょっと話したいことがある。
......依頼の内容についてじゃ。
あんたの言う通り、おそらくこの仕事はあんたらの任務外じゃろう....実はわしは超恐ろしい男に命を狙われている」

「超恐ろしい男...?誰です?」

「...あんたらも名前ぐらい聞いたことがあるじゃろう。海運会社の大富豪、ガトーという男だ」

「え...ガトーって、あのガトーカンパニーの?世界有数の大金ちと言われる....!?」

「そう...表向きは海運会社として活動しとるが、裏ではギャングや忍を使い麻薬や禁制品の密売...果ては企業や国の乗っ取りといった悪どい商売を業としている男じゃ...」

そんな話は聞いたことが無かった。きっとガトーが情報を漏らさないように権利や金を使って脅し、口止めなどをしていたのであろう。

「一年ほど前じゃ...そんな奴が波の国に目を付けたのは。
財力と暴力をタテに入り込んできた奴はあっという間に、島のすべての海上交通・運搬を牛耳ってしまったのじゃ!島国国家の要である交通を独占し、今や富の全てを独占するガトー...
そんなガトーが唯一恐れているのがかねてから建設中の、あの橋の完成なのじゃ!」

「なるほど...で!橋を作ってるオジサンが邪魔になったって訳ね...」

「じゃあ...あの忍者達はガトーの手の者.....」

「....?」

サクラ、サスケは理解できたがナルトは理解が出来ていなかった。

「しかしわかりませんね。相手は忍すら使う危険な相手...なぜそれを隠して依頼されたのですか?」

「波の国は超貧しい国で、大名ですら金を持っていない。もちろんワシらにもそんな金はない!高額なBランク以上の依頼をするような...」

タズナは暗い表情を無理やり笑顔にして話を続ける。

「まあ、お前らがこの任務をやめればワシは確実に殺されるじゃろう...
が、なーに!お前らが気にすることはない。ワシが死んでも10歳になるかわいい孫が一日中泣くだけじゃ!!あっ!それにワシの娘も木の葉の忍者を一生恨んで寂しくいくだけじゃ!いやなに、お前たちのせいじゃない!」

...これ断ったら絶対恨まれるな。



あそこまで言われたら断れないし、面倒な事になりそうだし、恨まれるのも嫌だから承諾したけど...ほんと最悪な依頼だよ...

「静かにしてくれよ君。
私はこんな小舟で襲われるなんて勘弁なんだからな」

「わかってるっつーの!おっちゃんこそ騒ぐんじゃねーぞ!」

「はいはい」

だるそうに返事をすると、カカシが前を向いたまま小声で男性に話しかける。

「あのさぁ、他に方法は無かったの」

「船はこれ一本、しかもタズナさんの必至のお願いでのみ。こんな霧じゃ見失う事もあるので仕方がなかったんですよ。上手く誤魔化せているから問題ありませんよ」

男性は表情一つ変えず、同じように前を向いたまま返事をする。

「時々大胆な行動をするよね。名前って」



 船に乗る時の事である。

「じゃあ、船を出すぞ」

「ま、待ってくれー!」

「?」

声のする方を見てみると、一人の男性が息を切らしながらこちらに向かって走ってきたのだ。

「この船は波の国に行くのか!?」

「そうだってばよ!おっちゃんも波の国に行きたいのか?」

「ああ、そうだ」

「だが、このルートは危険だぞ。命の保証ができねえ」

「構わん」

「そうか、じゃあ早く乗った乗った」

カカシはこの男性を見て察した。
こんな所まで来て波の国に行く人はそういない。つまりこいつは名前が変化した男性。変化してばれないように一緒に波の国へ行こうという事だろう。ばれたらどうするのやら...



「あんまり目立つような行動はしないでちょうだいね。さっきといい今といい...」

「以後気を付けます」

長い説教を聞く前に謝り話を区切る。
何か言いたげな顔をしていたが長々と話すと怪しまれるので話はしなかった。

それからしばらくもないうちに陸が見えて来たのであった。

「着いたぞ」

船頭は小さな船着き場に小舟を止めると、全員を下した。

 さて、どんな困難が待ち受けているのやら。
できれば遭遇したくはないものだ……と、先の見えない霧に覆われた里に目をやった。



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