木の葉丸
「ふぁぁ…」
名前は欠伸をしながら火影邸からナルトが出てくるのを待っていた。
ナルトは忍者登録書を提出するために火影邸にいる。
「つーか、ナルトの奴、変な化粧して証明写真撮ってたよな…あれ通るのか…?」
ナルトは証明写真を撮るとき、歌舞伎役者のようなかなりド派手なメイクをしていたのだ。
どうせ取り直しになると思うけどね。
しばらくボーッとしていると、ナルトが火影邸から出てくるのが見えた。
一人の子供になつかれて。
「ナルトの後ろについてきている子供…
あれは…火影様のお孫さんだ。確か木の葉丸だっけ?
なんでナルトと一緒に…」
名前は近くに行き、二人の様子を確かめやすい場所に移動した。
「ついてくんな!!!
何だってばよぉ!!!」
ナルトが振り返り木の葉丸に指を指すが、木の葉丸自身は尾行にバレていないと思っているようで、何度も下手クソな隠れ方をしていた。
壁の模様と別の布で隠れるな。
布の先端が風でヒラヒラしすぎだ。
あと、頭が隠れきっていない。
隠れる気あるのか。と言いたくなるくらいバレバレである。
「フフフ…
よくぞ見破った!コレ!!
さすが噂通りの男!
俺、お前の子分になってやってもいいぞ。コレ」
「は?」
ナルトは木の葉丸が急に変なことを言い出すので訳がわからないような顔をする。
木の葉丸…
人に頼み事をするときは上から目線はやめろと火影様から教わらなかったのだろうか。
「そのかわり、
火影のじじィを倒した、おいろけの術というのを教えてくれ!!頼む親分!!」
ちょっ…!!!
なんだその術!?
聞いたことないぞ!!?
一方のナルトは
「オヤブン……」
その言葉に惹かれていた。
「いいかぁー!基本は、ボン!!キュッ!!ボン!!だ!
やれェー!!!」
「オッス親分!!変化!!!」
木の葉丸が印を結んで変化と言うと、白い煙が周りを覆い、その中から出てきたのは…
かなり太っていて、お世辞にも綺麗とは言えないブスがいた。
しかも、ブラとパンツのみの。
「ダメー!!!!違ーう!!
もっとスレンダーに!もっとビューチフルに!!!」
「オッス!!親分!!!」
ナルトと木の葉丸はさっきまでいた住宅街から離れた森で修行をしている。どうやら親分と呼ばれたのが気に入ったようで、木の葉丸に修行をつけるようだ。
修行…この言葉だけ聞けばまともに聞こえるだろう。だが、彼らがやっている修行はくだらないものである。
名前は二人を見て、頭を抱えて溜め息をつく。
どうやらこの修行でやっているおいろけの術というものは美人なお姉さんに変化し、男を魅了する。
と、いう術のようだ。
いかにもナルトが考えそう術だな。
そういえば、木の葉丸はこの術でナルトが火影様を倒した…と言っていたな。
火影様に後で話を聞いてみようかな…
修行を始めてからしばらく経ち、疲れた木の葉丸とナルトは休憩することにした。
名前は木の上でのんびりと足を伸ばして休んでいる。
勿論、監視は続けている。
「ところで…なんでお前ってばそんなに火影のじいちゃんに食ってかかんだ?」
あ、それ私も気になる。
木の葉丸はここ最近ずっと火影様に勝負を挑んでいるのだ。
何があったのかは聞かなかったが、気にはなっていた。
木の葉丸はしばらく黙りこんでいたが、口を開く。
「木の葉丸って名前……
じいちゃんがつけてくれたんだ。この里の名前にあやかって。
でも、これだけ里で聞きなれた響きの名前なのに…
誰一人その名前で読んでくんない!
皆、俺を見るときや俺を呼ぶとき、ただ、火影の孫として見やがんだ。
誰も俺自身を認めてくんない。もう、やなんだそんなの!!だから今すぐにでも火影の名がほしーんだ!!」
「バーカ!!
お前みたいな奴、誰が認めるか!」
「え!?」
木の葉丸は驚いた。
ナルトが慰めるような事を言うと思っていたのだろう。
「ガキが語るほど、簡単な名前じゃねぇんだよ。」
「なに!?」
木の葉丸はナルトを睨み付ける。
「簡単じゃねぇーんだ、バーカ!火影火影って…そんなに火影の名がほしけりゃな…
この俺をぶっ倒してからにしろ!!」
木の葉丸はなにも言わなかった。
睨みつけることもしなかった。
そういえば、火影様やイルカから聞いた話だが、ナルトも火影を目指しているんだよな。
「(ん…?)」
名前はこちらに向かってきている気配に気づく。
「見つけましたぞ!!」
「!!」
「え!!!」
二人は声のする方を振り替える。
そこには黒眼鏡をかけている、真面目すぎる木の葉丸の家庭教師のエビスがいた。
どうやら木の葉丸はまたエビスから逃げていたようだ。まあ、あいつの話なんて聞いてるとうんざりするから逃げたくもなるか…
「さっ!お孫様、帰りましょ!」
「ヤダ!!
俺はじじィ倒して火影の名をもらうんだ、今すぐ!!邪魔しにくんな!!」
木の葉丸は子犬がキャンキャン吠えるようにエビスに向かって叫ぶ。
「つーか、火影の名を貰うって…さっきのナルトの話聞いてたのかよ…」
しかし、そんなので引くエビスではなかった。
木の葉丸に向かって歩き、グチグチと説教のように火影の事を説明し始めた。
うぜぇ…
名前は口に出しては言わなかったが、エビスのグチグチ説教をイライラして聞いていた。
しかし、それに休止符をうったのは木の葉丸であった。
「変化!!!
くらえ!!おいろけの術!!!」
煙の中から出てきたのはスタイルの良い美人であった。
おお…今度はちゃんとしたボンキュッボンの美人に変化している!!
じゃなくて…はぁ…とうとうそのくだらない術を会得したか。ははは…
もう笑うことしかできないや。
しかし、その術を見たエビスはポカンと口を開けたまま、唖然としていた。
「あれ?きかねぇ!!」
「な…なっ…!
なんというお下品な術をおお!!!
私は紳士です!!そのような、超低俗な術には!!!決してかかりませんぞォ!!!」
エビスはキィィィ!と怒る。
おい、エビスお前さっき唖然としてたじゃないか。
ばっちりかかってただろ…
「お孫様!!そんなふざけた奴と一緒にいると、バカになる一方ですよ!!!私の言う通りにするのが、火影の名をもらう一番のちかみちなのですぞ!!
ささっ帰りましょ」
「ヤダァー!!!」
エビスは木の葉丸のマフラーを無理矢理引っ張り、連れて帰ろうとする。
しかし、木の葉丸も負けじと足掻く。
そんな中、自分の術を超低俗と言われてムカッとしたナルトは印を結ぶ。
「影分身の術!!!」
ナルトは影分身の術を使い、分身を10数体作り出していた。
「うっわあぁぁ!!
スッゲェー!!!コレ!!!」
ナルト…お前、おいろけの術じゃなくて分身の術教えればよかったんじゃ…
「フン!
くだらない!こう見えても私はエリート教師…
ミズキなどとは違うんですよ…」
確かに、エビスはミズキとは違って分身の見分けが上手い。自分でエリートっていうのは気にくわないがな。
ナルトは前回のミズキのときと同じように攻撃ふるのかと思っていた。
が、次の瞬間
「変化!!!!」
白い煙と共に現れたのは、裸のナイスボディの美女達であった。
エビスはたくさんの美女達に囲まれ、鼻血を吹き出して倒れたのであった。
「名づけて、ハーレムの術!!!」
どうやら、分身の術とおいろけの術を複合させた術のようだ。
…くだらないがな。
「くっそおお!!!
また眼鏡教師すら倒せなかった!!コレ!!」
木の葉丸は悔し泣きをする。
「俺は早く皆に認められる名前がほしーのにィ!!
なぜだ、コレ!!?」
「そう簡単にいくか馬鹿。」
ナルトは軽く木の葉丸の頭を殴る。
「里の誰もが認める最高の忍者、火影って名前を奪うってんだからよ…
色々、やなことだらけで…
色々、迷うことばっかだろーし…
俺だって、俺の事認めてくれる人が一人できたけど…それだけでもスッゲー大変だったんだぞ!!やっぱ、覚悟しとかなきゃな。」
「...…覚悟?」
「皆が皆、認めてくれる…火影って名前語るのによーお!
ぜってェー!近道なんかねェーってことはよ!!!」
その言葉を聞いた木の葉丸は、ナルトに尊敬の眼差しを向けていた。
同じ夢を追っているからこそわかることなのであろう。
ナルトの奴、良いこと言うじゃないか。
…そうだよな。夢に近道なんてないんだよな…
「フン。えらそーに説教なんてしちゃってさ、コレ!
俺、もう子分なんかやーめた!これからは……ライバルだ」
ニカッと木の葉丸は笑う。
ナルトもつられてへへっと笑う。
「お前には悪りーが、俺ってば明日から一足先に忍者だ!
でも…ま!いつか、火影の名をかけてお前とは勝負してやんよ。…それまで楽しみにしとけな。木の葉丸!!」
ナルトは木の葉丸に背を向けたまま手を振って歩み始める。
木の葉丸はナルトの背を見つめたまま、敬礼して見送ったのであった。
「と、今日はこんな感じでしたね。」
「うむ。ご苦労であった…」
「そういえば火影様。
木の葉丸がナルトのおいろけの術で火影様を倒したと言っていたのですが、本当なんですか?」
「うっ……本当じゃ…」
まじかよ。
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