c 以前、アパートの場所は聞いていたのでたどり着くことは出来たが、部屋番号は聞けなかったんだった。 小さいアパートであれば、表札を一軒一軒見て回ったのだが、ここは五階立てアパート。 自転車を漕いでいる間中、どうしようか悩んでいたのだが、いざ行ってみると郵便受けが目に留まった。 「はー…早川、っと」 一つ一つ指で辿りながら探していく。 「あっ、…た」 406号室 すぐさま階段を駆け上がって目的地へと走る。 早川の具合が心配で駆けつけたはずなのに、胸がこんなにも高鳴るのはどうしてだろう。 胸が弾むのは、どうしてだろう。 「…はい」 呼び鈴を押して、しばらくしてから聞こえたのは掠れた声。 聞きたかった、声。 「…早川?ッ永田だけど!永田丞(タスク)!!」 「え、なんで…」 カチャリ、静かに開けられたドアの向こうに赤い顔した早川が立っ、 「お前、そんな顔赤いんなら寝てなきゃ駄目だろ!!」 ていた。 「それは、永田君が来るからでしょ…。あの、どうしたの?学校は?」 「お前が心配だったから抜けてきた。」 「ッ抜けて、って…そんなことしちゃ、ぁ」 「早川ッ!?」 「…ッごめ、ちょっとフラついただけだから…」 普通に話してたけど、こいつ、風邪引いてるんだよなって思い出して。 「じっとしてろよ?」 「え」 「わ、ぁと、ちょッ」 暴れる早川をお姫様だっこ…いや、担いでベッドまで運んでいった。もちろん早川は暴れてたけど。 ←→ [戻る] |