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仰向けに施術台に寝ている彼は、染みのない天井と、自らの腰付近を跨ぐようにして膝をついている白衣の院長を瞳に映していた。

これから施術が始まるのだ。

人肌程度に温められたオイルが、自分の胸に垂らされてゆくさまを、ニールはぼんやりとした頭で眺めていた。


今回はいつもとは異なり、オイル(確かアーユルヴェーダだとか)を利用したコースを頼んだ。一体何回来院しているのだろう、毎週予約時間が近付くとそわそわしている自分がいる。
まるで恋する女子高生だ。もっとも、その女子高生が24歳で、しかも立派な男性ときている。さらに相手は敵とも言える23歳男性(というよりは青年か?)。これが笑わずにいられるだろうか。
ニールは自嘲的な言葉を頭の中で繰り返す。

しかしその思考は、ある行為によって中断させられた。

刹那の指が、肌に触れたのだ。そしてそのまま、垂らされたオイルを胸全体に広げるように延ばしてゆく。
オイルには当然のようにぬめりがある。その透明の液体が刹那の指に絡まり、ランプの光をてらてらと反射させながら蠱惑的に這い回るさまは、ニールの平常心を崩壊させるのには十分だった。

照明は普段と違わずに暗めに落とされているが、今の彼には寝室を彷彿とさせて、理性をぐらつかせる要素でしかなかった。

刹那の手が脇腹を滑り、肋骨の隙間に指を入れてくる。老廃物を押し出すように何度も何度も肋骨の上をなぞる指先に、ニールは必死に興奮を鎮めようとしていた。

これは、マズい。具体的に言うと、肉体が健康な24歳男性として当然の反応を見せ始めているということだ。
そして、その真上には刹那が跨がっている。非常に危険な状況だ。

そんな事はつゆ知らず、刹那はマッサージを続けていたが、ニールの心臓の鼓動が早くなっているのが指先から伝わり、心配そうに手を止めた。


「痛かったのか。」

「いや、大丈夫だ。」

ニールからそう返事が返ってきたが、依然として鼓動は早いままだ。刹那は少し不安げに眉をひそめると、施術台の横に並べてあった机から、白いタオルを手に取った。

濡れタオルが胸の上を行ったり来たりしてオイルを拭き取ってゆく間、ニールは唇を引き絞り、今まさに暴走しようとしている理性を繋ぎ止めていた。

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あきゅろす。
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