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その後、ニールは何度も刹那の元を訪れるようになった。さして疲労していないような時も、予約を入れるのを忘れることはない。

刹那は、そんなニールを歓迎はしないまでも、嫌悪を感じる事はなくなった。
それどころか、一筋の興味のようなものが芽生えた。
治療をするために目の前に晒された大きな背中。まるで西洋の象牙細工のような――美しく研ぎ澄まされ、完成された肉体。
この男のコンディションが手に取るようにわかる。

両の掌を介して、伝わる、触れる。


刹那は僅かな違和感を覚え、ニールに問うた。

「…痩せたのか。」

「え、ああ、まあちょっと…」

ニールは内心穏やかではなかった。最近は自分の仕事の方も忙しく、確かに少し痩せた。しかし、それは体重にしてみれば微々たるものでしかなく、本人にもそこまで意識させる減少ではなかった。

その微弱な減少を、刹那によって見破られたのだ。


探っているのはこちらなのに、逆に探られている気がする。こちらの企みなど、とうに見破っているんだ、と声無き声で囁き掛けられる。刹那のその手が、その瞳が、その存在が、ニールの心臓をきりきりと締め付ける。いつの間にか、何故自分がこうも通っているのかわからなくなってきた。

敵であるのはわかっている。俺は“偵察の為に”ここに来ている――来ていた筈だった。

背中ごしに感じるもう一人の人間。呼吸音と掌の体温。

あの鋭い瞳が、俺の背中を見ているのだろう。あの引き絞った唇の隙間から、吐息が漏れているのだろう。あの褐色の手が、背中に延びているのだろう。

刹那という存在に触れたい。もっと深くまで知りたい。アイツが隠している素顔が見たい。


深みに嵌まるように、この男に惹かれていた。
足掻けば足掻くほど沈んでゆく。


抜け出すにはもう、手遅れだった。

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あきゅろす。
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