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カオスな人達の何かしらを退治する物語
0.こんな感じ


季節は冬(しかも年明け)ーー、暗い森……っぽい所を4人の若者達は、ただただ歩いている。
いつまで経っても薄気味悪い森(っぽい所)を抜けることは無く、ただただ黒は深まるばかり。時折聞こえる溜息は誰のものか。

「PK」

先頭を歩く青年ーースロッシュが口を開く。彼は赤錆色の甲冑を着込み、顔や体型は分からないものの、小柄だということだけははっきり分かった。
スロッシュは『PK』という謎めいた単語のみを呟き、以来開口はしない。

「何だよ急に、PKって……サッカーでもすんの?」

メガネの青年ーーディセンが呆れたように尋ねた。
目の下には隈、撫で肩等の特徴から無気力そうな印象を受けるが、このパーティー唯一の常識人。何故か学ランを着ているが妙に似合っている。ちなみに今年で24歳。年長である。

「分かんねぇの? 隠語だよ隠語」
「ああ、『パンツ食い込んだ』的な?」
「イエス」
「女の子が何言ってんだよ…ていうかお前も言わせてんじゃねぇよ」

スロッシュの後ろを歩いて可笑しそうに笑っているのはカウェイド。このパーティーの紅一点であり、最強の少女である。黒いマントに身を包んでいて体型は分からないものの、貧乳であることは誰もが知っている。そして、履いているブーツがシークレットだと言うことも。

「ていうかサクラくんは大丈夫なの? またお腹空き過ぎて倒れたりしないでよー?」
「笑い事じゃないから。運ぶのは俺だし」

最後尾の長身の少年はサクラ。確実に一人はいる和風キャラである。深緑の着流しに身を包み、黒い長髪は低い位置で一つに括っている。勿論、武器は日本刀。無口でクールだが、お腹が空くと貧血で倒れてしまう。今も真っ青になりながらフラフラと歩いているものの、カウェイドに次ぐ強者である。

「まぁ非常食のオニギリがあるし、大丈夫だろ。それより甲冑じゃPK直せないや」
「それはさっき昼飯に食ったろ」
「甲冑脱げばいいのに」
「寒いじゃん。今一月だぜ? 雪降ってんだぜ?」

そう、年が明けて間もない一月一日午前零時二十分ーー豪雪とは程遠いものの、鈍色の空からは冷たい雪が降っている。背筋はゾクゾクと震え、膝は笑い出し、鼻水は垂れ、ヘソは茶を沸かすのだ。ちなみに、最後のは適当である。

「ていうかどうして甲冑なんて動きにくいもの着てるのさ。ボクみたいにすぐ脱げる防寒着にすれば戦い易いのに」
「一番安全だろ、どこかのボクっ娘の手裏剣や撒き菱だって防げるし」
「あれは君がボクの水浴びを覗いたんじゃない。殺すよ」
「いいじゃねぇか減るもんじゃないし。ド貧乳」
「粗チン」
「お前らいい加減にしろ。カウェイドは汚い言葉を使うな」
「大丈夫、ボクが言えばどんな言葉だって美しい」


始まった二人のクソのような罵り合いを止めるのがディセンの仕事であり、ストレスの原因でもある。少しはサクラも手伝って欲しいと苛立ちもあるが、サクラが絡めば余計に面倒なことになるのを彼は知っている。年上の自分がしっかりしなければという責任感もあるだろうが、何せこの三人は考え方も方向性もバラバラで、纏め役はディセンしかいない。自分がいなくなれば何処で野垂死するやら。責任感に加え、多少の不安や心配もあって自分の意志で彼らといるのだから、誰を咎めもせずに三人の尻拭いをしている。

「あっ、サクラが死にそう」

スロッシュをバックドロップしているカウェイドがほう言えば、荷袋の中から自分の分のオニギリを取り出しサクラに渡す。母親か、と呆れるが、なんだかんだでそんな自分のポジションが好きなのだ。

「ていうか俺が主人公なんだけど」
「ボクはヒロインだけどね。あ、ディセン視点みたいな? コスプレおっさんのくせに」
「誰がコスプレおっさんだ。まだ24だし好きでこういう服を着てるんじゃないんだよ!」

止めると言っても、結局はディセンも参加してるんだけどね。ちなみに学ランは、高二で身長が止まってまだ入るから着ているらしい。

「…PKだわ」

収束も付かないまま、サクラはPKを処理した。




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