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ミコノイルセカイ


いつの間にか眠ってしまったと起き上がり、顔を洗って鏡を見るとひどく目が充血していた。真っ赤になった目を見て、自分に噛み付いてきた友人の目を思い出した。

友人も、目を赤く充血させていた。


もしかしたら自分も友人のように狂暴化するのかもしれないとリーダーは思った。

恐怖に慄いていると、ガシャーンとガラスの割れるような音がして慌てて部屋に戻る。

すると予想通り窓ガラスが割れていた。
窓ガラスは割られていたのだ。腰の高さまである窓から飛び散った破片で肉を抉られることを何とも思わずに進入して来ようとする隣の家のおばさんに。

目が合った。
赤く充血した目だった。

リーダーは玄関へ駆け出した。

逃げなくては殺される。


たくさん走って逃げているうちに疲れからか、頭がぼうっとする。

頭は正常な位置に持ち上げれず項垂れたような格好で、視界はボヤけて足元を映す。
まっすぐ歩けなくなり、ふらふらと道を行く。


ふらふらと歩いていると、またも目が充血し理性のない生き物に成り果てた人間と遭遇する。

逃げなくては。
そう思うが体は上手く動かない。

その生き物がこちらへ向かってくる。
もう終わりだと身構えるが、それは自分を無視して通り過ぎてしまった。

「は…はは、何だよ驚かせ…やがって…」

そいつを目で追っていると、次に出くわした人間を襲った。襲われた人間は若い女性で、血走った目はしていなかった。手を噛まれたようで悲鳴を上げて逃げていった。

てっきり自分をスルーしたやつなので人間を襲わないのかと思ったがそうでもないようだ。


自由の利かなくなった体で思う。

(もしかして俺、もうあいつらの仲間だと思われているんじゃないか?)

先ほど鏡で見た充血した目。
今ではもっと酷くなってあいつらみたいな色になっているのではないか。

そして思考が麻痺してくる感覚に、理性も無くなるのではないかと考えついた。


なぜこんな世界になってしまったのか。



「世界が終わる」

気がつけばあの事件の犯人と同じことを呟いていた。



そういうことか。
すべて納得がいった。


自分の今の症状は狂暴化した人間のなりかけ。
そしていずれは先ほど襲われていた女性も同様に狂暴化するのだろう。

詳しい感染経路は不明だが、その一つは間違いなく噛まれたことによるものだろう。

包帯を解き、傷口を見てみるとドクドクと赤黒く脈打っていた。




リーダーはゆっくりと目を閉じた。


『みんなをまもれなくてごめんなさい』

犯人の最期の言葉が蘇る。

「謝んなよ…、信じてやれなくてごめんな…」

虫のいい話だけどさ、1人で世界のために尽くしたお前を尊敬するよ。






世界は徐々に終わりを迎えていった。





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あきゅろす。
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