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ミコノイルセカイ



がたん!

犯人が縛り付けられていた椅子が倒れた。

耐えきれなくなったリーダーが犯人を殴りつけたその衝撃が原因だった。

「てめぇ…自分が言ってること理解出来てんのか!? 俺の弟が世界の害だと!? ふざけんな!」

殴られて倒れた椅子と共に床に転がっている犯人は、驚いてリーダーを見る。先ほどと同様にオロオロと周りを見渡しながら口を開く。

「あ…あなたの弟さんだけではなくて、おれが殺した人たち…全員がこの世界には不要なものだったんですっ」

その言葉に、リーダーを見守っていた他の被害者家族の会のメンバーが犯人を蹴った。

腹に蹴りが入り、犯人はグッと呻いた。

「お前のほうが世界に害だ!!!」

メンバーの言葉を合図に皆が横たわる犯人を蹴った。

顔や腹を隠そうにも椅子に縛り付けられた肢体では庇うことも出来ずに、犯人は暴力に晒された。

その暴力は、犯人が気を失うまで続けられた。


反応がなくなり、皆が少し落ち着き始めた頃にリーダーはパチッと手を叩いて注目を集める。

「ご覧の通り犯人は全く反省していない。俺はこのまま犯人をここで拘束し恨みを晴らしたいと思う。反対意見の者はいますか」

聞いてはいるものの、反対意見など出ないことは分かりきっていた。

「それでは今日はもう解散にします。犯人は見張りをつけて本部に拘留しますが皆さん勝手に殺さないように」

それは暗に、被害者皆んなで痛ぶりたいため暴走して殺してしまわないようにという忠告だった。






それからの毎日は、数の多い被害者の家族や恋人、友人など所縁の深い者が代わる代わる訪れ、犯人に罵声を浴びせたり軽く殴りつけたりして恨みを晴らしていった。

犯人はというと、ごめんなさいごめんなさい信じてと繰り返す中で早く世界の害を見つけて殺さなきゃいけないと未だに反省の色を見せない。

暴力を振るわれ続けた犯人の体は、至るところが赤黒い色をしていて同情する者までいた。けれど、トチ狂った犯人の発言を聞いてしまうと、再び暴力を奮ってしまう。

それが半年ほど続き、放心状態となった犯人は涙を流しながら壊れたように「世界が終わる」と繰り返し続けた。


そうして迎えた最期の日。

「…みんなを……まもれなく…て、ごめ……さ…」


皆を守れなくてごめんなさい。

そう言い残して犯人はゆっくりと目を閉じた。







被害者家族の会が世界の異変に気がついたのは、それからすぐのことだった。



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あきゅろす。
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