ミコノイルセカイ
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一方、他国では内部抗争が多く起こっているようで、誰もがこの国の現状に目を向ける余裕は無かった。
年間150人以上の被害者が出るこの事件の関係者はかなりの人数に及んだ。
被害者家族の会という団体は、事件の情報を集めるだけ集める国一番の大規模ボランティア組織となっていた。
その組織のメンバーは皆、一秒でも早く犯人を捕らえて被害者をこれ以上増やさないよう、自分たちみたく悲しい思いをする人が増えないよう願っていた。
そして最大の目的はなぜ無差別に殺し続けたのか、家族が殺されなくてはいけなかった理由を知りたいのだ。
だいたいの人間は、理由などないのだと悟ってはいる。それでも聞いておきたいと思ってしまうのだった。
そして、遂にその時はやってきた。
犯人が花を供えているところに遭遇した過去の被害者の家族がその光景を目撃した。
「お前えぇ……!」
被害者の家族は駆け寄って、それを察した犯人は逃げようと走った。
だが、被害者の家族が大声を上げたことにより犯人は呆気なく捕まった。
事件開始からおよそ2年と5ヶ月が過ぎていた。
「お願いしますっ、見逃してください!」
犯人は24歳の男だった。
優しそうな風貌で今も必死に解放を望んでいる。
この場所は被害者家族の会の総本部で、自警団隊に引き渡されずにここで事件の犯人は拘束されていた。
こちらへ移送中も見逃せ見逃せとしつこく喚いていた。
さらには
「あ!あそこの人を殺さないといけないっ離して!」
「あの人も! お願い殺させてよっ」
人を殺すことしか考えていないようだった。
本部に来てから、会をまとめているリーダーが犯人と話し込んでいた。
「どうして殺した?」
「殺さなければいけないから…」
「どうして殺さなければいけなかった?」
「……世界の害だから」
犯人の言葉に怒りをあらわに暴れる者、泣き出す者、呆れる者、様々な反応を見せる。
犯人と直接話しているリーダーも抑えてはいるが相当頭にきているようだった。
それからもさんざんだった。
犯人は世界の為に人を殺して回っていると発言したり、生きていて得にならない人間しか殺していないから見逃してほしいと発言した。
周りは既に自分を抑えられなかった。
リーダーもそれは同じようで、握り締めた拳から血が流れている。
怒りが伝わっているのかいないのか、犯人はオロオロと周囲を見渡し尚も続けた。
「おれ、ほんとうに世界を守りたかっただけなんだっ。お願いですから信じてください!」
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