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『僕と私の世界の形』
僕と私の世界の形 4話−2
私は海の上、帆船内の自室にいた。
「ユキ、早く、早く!」とクリスが戸の向こで私を急かしている。
「もう少し、待て。」私は白いYシャツ、黒いジーンズに急いで着替えた。
戸を開け出るなり、クリスに腕を捕まれ、船の甲板に連れて行かれた。
「まっ待て…」私は叫んだがクリスは止まらない。
クリスがヘリに合図をするとロープが下ろされた。
「私はヘリでは行かぬぞ。」と私は言い、クリスの手を引き止めた。
「船で行くつもり!会議が始まるまで、あと1時間よ。しかも、帆船で何日かけて行くつもりなのよ。」クリスは相当焦っていた。
「1時間。」他の人なら1・2日はかかるだろうが、私には自信があった。
「無理よ。」クリスはあからさまに信じていないといった感じに言った。
「見くびるでない。行くぞ。」と私は言うと同時に、帆を張るロープに飛び着き、帆を張りながら、舵がある上の甲板に移った。
「ユキー!エンジンも付いて無いこの船じゃ無理よ。」クリスは慌てて、私をヘリに乗るように言い続けた。
風が吹き船が動いた。
「ユキ、逆よ!」とクリスは言い、私の所まで上ってきた。
「大丈夫だ。このまま進めば海流に乗れる。その時、風向きもかわる。」私は潮の流をみながら言った。
「解ったわよ。1時間ですからね。」とクリスは諦め顔で言ったと同時位に向かいから強い風が吹いた。
船は向きを変え、目的地へと進み始めた。
「ウソ…」クリスは驚き呆然としていた。


「56分、まぁまぁか…」と私は呟いた。
「こっこの船、エンジン付きにしたの…」とクリスは腰を抜かしたみたいに座り込みながら言った。
「時間が無いのであろ、走るぞ。」と私はクリスの腕を掴み、船を降り走り始めた。
議事堂な『エベレス』の一番高い丘にある。石畳で出来た道を風に押されながら走った。道の両側にある畑のオレンジの香りがする。
「ユキ、もう私は無理よ。先に行って…」クリスは息を荒くして言った。
「私に行けと申したのに、そなたは行かぬのか。」と私はクリスの言葉を拒否した。
「後からいくわ。」とクリスはもう限界みたいだった。
「しかたあるまい、行くぞ。」私はクリスを抱きかかえ走った。
「キャッ!」クリスは驚き私にしがみついた。

「15分遅れ、到着じゃ。」入口までは来れたが、もう会議は始まっていた。
クリスに朝の勢いはなかったが…「早く、会議室に行ってよ。」と気持だけは朝のままだった。
「どんな結果になろうとも恨むでないぞ。」私は多分、クリスの望む事と逆を選ぶ…そう思った。この一言を残し、私は 議会室の戸を開け踏み込んだ。


「この法案で自由が手に入る。可決するべきだ。」「この星に未来など無い、この水だらけの星で何が出来る。」口々に『月星』『NEWコスモ』の議会委員達は、この星は危険だの、美味しい餌を吊るしたような事を軽々と言っている。
「うるさい。」周りには聞こえ無い程度の声で私は呟き、中央へ降りる階段を静かに、しかし堂々と降りた。
私に気付き始めた者達が口をつぐみ始めた。
議会室は静かになった。
「審議長殿、遅れて申し訳ない。議会への参加を許可ねがいたい。」と私は申し出た。
「許可します。席へ着いて下さい。」とすんなり許可された。
そして、空いている席に座った。
「おい、ユキ。」と後ろからつつかれた。
水の星議員の一人、光源(コウゲン)だ。東洋系そのままの黒髪に黒目をしている。
「なんじゃ?」私は振り返りもせず返事した。
「おまえ、来るの遅いんだよ。」と光源は少しふてくされたように言った。
「私は議員では無い、来る気はなかったのじゃ。」と私は言った。
「じゃあ、何で来たんだよ。」光源は目を横へ反らし言った。
「クリスに頼まれてな…」私は少し複雑な気持になっていた。
クリスに頼まれたのは、今回の議題を否決する事。しかし、私は可決を選ぶだろう。
机に両ヒジをつき、手を合わせ、その上に頭を置きうつ向いてしまった。どうすべきか…
「ユキ、貴女の意見をお聞きしたい。」審議長に言われ、私は我にかえった。
「はい!審議長殿。」もう、考えているよちはなかった。
「私は可決を望みます。」私はきめたのだ。
自分の考えを信じようと。
「ユキ!?」やっと来たクリスが驚いていた。無理も無い、私なら否決を言ってくれると信じていたからだ。
もう後には退けない。
周りはざわめいていた。『月星』『NEWコスモ』からは喜んでの声が、『水の星』からは戸惑いの声が…私は叔父上の方をチラッと目をやった。
叔父上は私を信じるという顔でこちらを見ていた。
「されど、条件がごさいます。」ざわめきをかき消すように私は言った。
私の答えは一つだった。

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あきゅろす。
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