『僕と私の世界の形』 僕と私の世界の形 5話 僕はココに居た。 夢町の朝 カーテンから優しく光が溢れている。 部屋の空気が少し冷たい。 …が、横向きでうずくまる様に寝ている僕の、お腹の辺りが温かい。 手をお腹の辺りへやってみる。 「!?」何かが居る。毛布を少し上げて、布団の中を覗くと黒い耳がピクッと動くのが見えた。 毛布を少し上げてせいで冷たい空気が入ったからだ。 お腹の辺りで丸まっていた様だが、「寒い…」と呟き、僕にしがみ付いてきた。 「幻?」と僕が呼ぶと、ハッと我にかえった様に飛び起きた。 「あっ、あのぉ〜ごめんなさい。」と幻はオドオドしながら耳を下げて言った。 「きっ昨日、夜冷えて…」とベッドの角に縮こまり、僕の様子を伺っていた。 「今朝は少し冷えるね。こっち来たら?」と僕は隣をトントンとたたいて呼んだ。 幻は耳をピンと立て、嬉しそうに僕に飛び付いて来た。 子供の体温みたいに幻は温かった。「温かい。」と僕は呟き幻を抱きしめた。 幻はゴロゴロと鳴きながらしがみついてきた。 「幻、今日は何屋さんをするの?」僕は何気なく聞いてみた。 「クレープ屋さんです。」と幻は言い、僕から離れてベッドを降りた。 戸まで行った所で振り返り「今日は、お店を早めに閉めて、街を案内しますね。」と言い、嬉しそうに走りながら一階の店へと幻は行ってしまった。 幻が去った後、僕はスーと寒くなったように感じた。 「早く着替えよ。」と呟き、クレープ屋さんポイ服を考えた。 青系のジーンズに、白い長袖Tシャツ、水色のエプロンに着替えてみた。 一階の店へと下りると、焦がしバターと甘い香りがしていた。 幻は、クレープ専用の鉄板にバターを塗り、生地を流し入れ、専用のヘラでのばし焼けるのを待っていた。 もう、何重にもなってクレープの皮が横に出来ていた。 幻は僕に気付き、「朝食替わりにいかがですか?」と薦めてくれた。 「いいの?」と僕は返事を返した。 「はい、待ってて下さいね。今、作りますから。」と幻は今、焼いていた皮が焼けると、僕のクレープの準備に入ってくれた。 イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーにクランベリーと僕の好きな物ばかり用意された。 お皿の上に皮を扇状に折りられて3枚置かれた。その横にクリームと、沢山のベリー類が置かれ、最後にアイスが置かれ、全体にベリーソースが掛けられた。「はい、お待たせしました。『幻永』オリジナル・ベリークレープです。」と幻は言い、昨日のカーテンの様に丸テーブルと椅子を出した。ナイフとホォーク、ナプキンが用意されていた。 テーブルの上にお皿を置き、幻は「さぁ、席に座って下さい。」と椅子をひいてくれた。 「あっ、どうも。」と僕は言い座った。 「さぁ、食べて。ベリー系のお菓子好きでしょ?」と幻は言い、僕の前の椅子に座った。 「何で知っているの?」僕は少し驚いた。幻に言った記憶は無いが…と思った。 「さぁ、どうしてでしょ。」と両肘をテーブルにのせ、両手を顔の下で組、幻は笑顔で言った。 「ミルクたっぷりの紅茶もいかがですか?」と幻は、またしても僕が好きなのを知っているかの様に言った。 「うん、欲しいな。」と僕は返事をして、この世界は『魔法界』なのかな?と自分なりに理解してみた。 「はい、どうぞ。」と言い、幻はマグカップはミルクティーを持ってきてくれた。 「いただきます。」と僕は言い、ホォークとナイフでクレープにベリー類とアイスをくるみ食べた。 「美味しい〜。」僕は思う声をだした。 薄いクレープの皮はフワッとしていて、ベリーとアイスにぴったりだった。 何より、甘い物なんて久しぶりに食べた気がした。 僕がお菓子やケーキを食べていると周りが意外に思う気がしていたからだ。 「好きな物は、好きと言って食べていいんですよ。」と幻が言ったような気がした。 が、幻は僕をを見ながら、幸せそうに紅茶を飲んでいるだけだった。 「何か言った?」と僕が言うと、幻はキョトンとした顔で「いいえ。どうして?」と答えた。 「ううん、何でもないよ。」と僕は言った。 不思議と幸せな朝だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |