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◆桜戦線異常なし(しげる×市川/短文)






ドサリッ――
「…っ」
市川は両腕をアカギに捕えられて仰向けに押し倒されていた。
開け放した縁側からは桜の蕾の匂い。
まったく、こんな情態を誰かに視られたりしたら…どうやって弁解すれば良いのかね。
ふわり…と、昼の春風がアカギの白髪を撫でて過ぎた。
「なんで抵抗しねぇの?市川さん…」
市川の首もとに鼻をうずめて子猫がじゃれるみたいに"くすぐり"乍ら。
アカギは問うた。
「別に…面倒くせぇだけだ」
市川は本音からの台詞を吐いた。溜め息と共に。
アカギはフフと嗤う。
嗚呼…くすぐってぇな此のガキは…。
「麻雀の時は…あんなに抵抗したのに?」
ちっ、と心中で舌を鳴らして市川は盲いた網膜をアカギに向けた。
半分ずれた黒眼鏡の奥から睨み上げるように。
「おいガキ、…アカギよ。儂はプロだ、麻雀にかんしてはな。アレとコレとは違うんだよ…麻雀は勝たなけりゃあなんねえんだ」
「ククク…そう。あんたはただ勝つ…愉しみもせずにね」
「楽しみなんざあるものか。儂ら玄人にあるのはプロ意識だけさ」
アカギはペロリと舌を出して市川の顎先から舐め上げるように動く。
蕾のような瑞々しい唇が市川の渇いた唇を覆い隠した。
「…」
絡んだ口腔から…桜の蕾のようなアカギの唇から…馥郁たる香りが市川を蝕んでゆく。
そう…蝕んでゆくのである。
「はあ…上手いね市川さん、キス」
「…ちっ」
調子づくんじゃねえ…色事に手ぇ出すには十年がとこ早いんだよ、赤木しげる。
「市川さん、麻雀は愉しめなくてもさ…」
アカギはするすると手を滑らせて市川の股間の辺りをまさぐった。
「コッチは、愉しむ余地…残ってるんでしょう」
イチモツを撫でる。
「おい…」
「アレとコレとは違う…ってアンタが言ったんだぜ…くくく」
ああ…ああ…もう好きにしやがれ。
諦めてすぅ…と息を吸った。
暖かい春の空気。
明日には咲くであろう桜の蕾が、はちきれんばかり。








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