◆短文小話(ひろ/健) 健は居酒屋のカウンターで足をぶらぶらさせながら言った。 「ああ…麻雀したいわ〜」 隣で酒をのんでいたひろゆきが、すかさず理知的な突っ込みを入れる。 「すればいいだろ」 健は、カウンターに突っ伏して肘に顎を乗せた。 「メンツ足りへんもん」 「雀荘いけよ」 「行ったけど、周りのモン弱いんやもん。血ぃが騒がへんやろ」 いかにも暇そうに麻雀がやりたい、と呟く健を見てひろゆきは呆れたように溜め息をついた。 「じゃあ、麻雀の塾の講義でもする?オレの代理で」 「えっ!ええの?やるわー」 「じゃあ、宜しく」 2日後―― 「健っ!おまえ、塾生にイカサマばっかり教えただろ…!」 「あったり前やん。ひろが教えへんよーな事を教えたまでや」 「あのなぁ〜」 「ひろっ!!」 健は、ビシッ!とひろゆきの鼻の頭に人差し指を突きつけた。 「……!?」 「2人の人間がおんなじ事をやるのは合理的や無いで?効率も悪い!」 鬼の首でもとったかのように不敵な笑みを浮かべる健である。 ハッ…! 勢いに呑まれそうになっていたひろゆきは気を取り直した。 「健っ!」 ひろゆきは、ガシッ!と健の胸ぐらを掴み上げる。 ひろゆきの目は据わっていた。 「屁理屈ばっか言うなよ?麻雀塾はヤクザの賭博場じゃ無いんだぜ」 「ひろ〜、目が怖い〜」 「他に言うコトは無いのかよ」 「す、すんまへんでした」 「よし」 おしまい [*前へ][次へ#] [戻る] |