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06




「ラビ、顔赤い」

「っ!?」

熱でもあんのと、きょとんとした顔で見上げられて、先程の質問を思い出してしまった。
せっかく忘れかけていたのに。
背後でイルミナが笑った気配がして、悔しげに眉を寄せる。

「いや、何でもないさ」

「そう?」

よほど腹が減っているのか、ラビが否定するとクライサはあっさりと引き下がり、神田と連れ立って歩いていってしまった。
上機嫌なイルミナがその後に続き、ラビは顔を歪めたまま両手を頬にあてる。
あつい。
なんでだ。

「ラビ」

そこに唐突に名を呼ぶ声が聞こえて、大袈裟なほど肩を揺らした。
振り返れば、低い位置にいつもの顔。

「なんだ、じじぃか…」

驚かすなさ、との文句には、こんな事で何を驚く必要があると冷めた反応が返ってくる。
ブックマンは普段より一層厳しい顔で、修練場を後にしようとしている少女らの背中を見た。

「……ラビ。あの二人にはあまり深く関わるな」

「二人って…クラとイルミナさん?」

ラビとブックマンは、エクソシストではあるが本来は記録者という立場の人間だ。
『ブックマン』はあくまで中立であり、伯爵側も教団側も記録の対象でしかない。
記録対象に心を許すな、それは常々言われてきた事だ。

「あの二人は異世界の人間。それがこの戦いに何らかの影響を与えるのならば、我らが記録しないわけにはいかない」

「………」

「余計な感情は捨てろ。…特に、クラ嬢に対してはな」

特に彼女と接する際のラビの態度は、記録者として適していない。
それだけ告げて、ブックマンは去っていった。
残されたラビはそのまま暫し師の背中を見ていたが、食堂に向かう事を思い出すとぶるぶると頭を振ってから駆け出した。


心を許してはいけない。
彼らはあくまで記録の対象。
ブックマンは中立でいなくてはならず、誰かの仲間になる必要はない。

(…クラは、異世界の人間だ)

どちらにせよ、彼女とイルミナもいつかは元の世界に帰るのだ。
ならば、ほんの少しの間だけ『仲間ごっこ』をしていればいいだけの話。

ズキンと胸が痛んだ事に、ラビは気付かないふりをした。



【H21/12/07】

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あきゅろす。
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