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05




屋敷の外に出ると、球体型のアクマが数体、こちらを見下ろしていた。
かと思えば、突然血の銃弾を撃ち出してきた。
それをクライサは氷の壁で防ぎ、神田とラビが武器を手に跳躍する。

あまりに呆気なく破壊されたアクマ達。
周囲に仲間がいない事を確認すると、クライサ達はミスティの元へと走った。


「アルが、アクマ?」

どきりとした。
久しく耳にする事のない友人の名と同じ単語が、彼女の口から出たものだから。
それがアルバートの事を言った呼び名だと理解すると、クライサは肩から力を抜いた。

「……そうですか。私はここを離れるべきなんですね」

「うん。不死とは言っても、アクマに狙われたくはないでしょ?教団本部ならあたし達の他にもエクソシストがいるし、ここより安全だと思う」

200年以上もの時を過ごした屋敷を離れ難いのはわかっている。
ラミアン達を残していくのも心配なのだろう。
彼女が了承の意を示すまでに、短くない時が過ぎた。

「一晩、時間をください」

気持ちを整理するために欲した時間。
クライサ達の中で誰一人、それに反対する者はいなかった。








『アル』

日が傾き始め、空が橙に色づき出した頃。
彼女の色から離れていく空を、クライサは広い庭で見上げていた。
その脳内を占めるのは、懐かしい友人達の笑顔。

(今、どうしてるかな)

時間がある時、図書室や資料室に籠って、元の世界へ帰る方法を探していたが、未だ目ぼしい情報は手に入らない。
帰れないんじゃないか、とか、いっそ夢だったら良かったのに、とか。
自分らしくない事を思ったのは、一体何度目だろう。

(会いたい、よ)

みんなに、会いたい。
同僚達に、兄に、友人に。


『アル』と呼ばれた彼の隣で笑う、黄金色の少年に。


(会いたい)






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あきゅろす。
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