03
「それで、何かわかったの?」
「………」
「…わからなかったのね」
コムイと別れた後、任務帰りのイルミナと偶然会って、誘われるまま食堂にやって来た。
そして最近の不調を話してみれば、彼女は頬に手をあてて頭を傾ける。
「イノセンスが何かを探す…」
「うん、多分そうなんだと思う。イルミナさんは心当たりない?」
しかし首を横に振られて、クライサはがっくりと肩を落とした。
異世界の人間ゆえのイレギュラーが原因かとも思ったのだが、イルミナが違うと言うのならそうではないのだろう。
結局まだ、不調の理由はわかりそうにない。
「あーもう問題だらけ。帰る方法も探さなきゃなんないのにー」
「そうね。エドくんのことも調べなきゃならないしね」
「……うん」
ロードが言った『エド』が、クライサ達の知るエドワード・エルリックである確証はない。
しかし、ここに来て彼の名を聞いたのが、単なる偶然とは思えない。
クライサがこの世界に飛ぶきっかけをつくったのは、彼とロイと三人同時に使用した錬金術だった。
ならば、エドワードが同じようにこちらに飛ばされていても不思議はない。
「エドくんかどうか確かめるには、やっぱり本人に会うしかないわね」
「…ティキあたりに、エドにチビって言ってその反応を教えてって頼んでみれば、確認とれるかもよ」
「いずれにせよ、ノアに会う必要があるわけね」
『エド』をどうしてロード達が知っているのか、彼はノア達の元にいるのか、彼は今どうしているのか。
わからない事だらけだ。
会いに行くにしろ、来てもらうにしろ、話を聞くにしても、ノアに……ティキかロードに会わなければならない。
ただ、今クライサとイルミナはルベリエによって監視されている身だから、再度ノアと接触すれば疑いは強まるだろう。
戦闘でもすれば別だろうが。
「ま、会おうと思って会える相手じゃないし、成り行きに任せるしかないんじゃないかな」
「確かにそうね。クラちゃんのイノセンスの事も、考えても仕方ない状況みたいだし…まだ暫くこっちにいる必要がありそうね」
時間が解決してくれるとは思わないけれど、いくら意気込んでも仕方ないのだ。
イノセンスの事、エドワードの事、帰る方法。
これまで生き延びてきた自分の強運を信じて、状況打開の機会を待つしかなかった。
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