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02




このイノセンスを持った時から違和感はあったのだ。
それが最近になって顕著になってきた。
はじめのうちはイノセンスというものはみんなこんな感じなのかとも思ったが、今ならわかる、これはおかしい。

(何かを探してる……何を?)

発動している時でも、そうでなくても、このイノセンスは常に何かを探している。
求めている。

(イノセンスが求めるもの…適合者?)

自身を扱う者、自身と呼応する者を探しているなら、既にクライサが適合者となっているのだから見つかっている筈だ。
ならば、イノセンスが他に探すものとは何なのか。

「もしかしたら、氷釧はハートを探しているのかもしれないね」

「ハート?」

困った事はコムイに聞け、というわけで、書類に埋もれた司令室を訪ねてみた。
そして相談してみれば、返ってきたのはそんな言葉。
また新たな単語が出てきやがったな。

「世界中に109個あるイノセンスのうちのひとつに、『心臓』とも呼ぶべき核のイノセンスがあるんだよ」

「それが、ハート?」

「そう。それはすべてのイノセンスの力の根源で、ハートが壊されると残りの108個は消滅してしまうんだ」

ヘブラスカのイノセンスである『石箱(キューブ)』にはそう書いてあるらしいのだが、ハートと呼ばれるイノセンスがどんな形状をしているのかの表記は一切ないそうなのだ。
もう回収してあるのかもしれないし、誰かが適合者になっているのかもしれない。
教団の方でも、回収したイノセンスをヘブラスカにみてもらったりはしているのだが、ハートについては何もわからないらしいのだ。

「そのハートを、なんで氷釧が探してるの?」

「さあ?」

「………」

だから僕はもしかしたらって言ったでしょ?他に探してるっぽいものなんかわからないし、第一適合者である君にもわからないものを僕がわかる筈が云々。
唇を尖らせて言われてしまえば、怒る気力もなくしてしまう。
ああこの感じ、何かに似てると思ったら、屁理屈を言う兄を前にした時と同じなのだ。
怒りより先に呆れと感心が生まれてくる。

「とにかく、気になるようだったら一度ヘブくんにみてもらう?」

「うーん…」

何かわかるとは思えないのだが、かといってずっとこのままでは困る。
数体のアクマ程度ならまだしも、大群やノアを相手にしている時にイノセンスが働かないとなっては命に関わる。
期待はしないまま、クライサは首を縦に振った。






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