05
どうやら『千年公』というのは千年伯爵の愛称らしい。
「その千年公が言ってたんだよ。『毛色の違うエクソシストがいる』ってね」
以前の任務の時、ミスティの屋敷で伯爵に名乗って以来、少なからず気にかけられていたのだそうだ。
ノアのほとんどに話を通されてしまったらしいから、何だか面倒くさくなりそうな気がする。
「で。お前はオレの玩具にする事に決めたから」
「はぁ!?何わけわかんない事言ってんのさ、このオタンコナス!!」
「オタンコナスて」
そんな事を言われて、はいそうですかなどと返せるわけがない。
どういうつもりでの発言かは知らないが、確実にろくな事にならない事だけは理解出来た。
いっそ、この場で白黒つけてやろうか。
イノセンスを発動させたまま戦闘体勢をとるが、攻撃を仕掛ける前に彼は上空へと逃げてしまった。
「ちょっと待てノア!」
「ティキ」
「誰が呼ぶかバカ!」
「つれねぇなぁ」
懐に手を差し入れて、内ポケットから取り出した煙草を一本、口にくわえる。
右手に持ったライターで火を灯し、ふう、と煙を吐き出す。
余裕のある様子で一連の動作を行うものだから、なお憎たらしい。
「今日はこの辺でな。また遊ぼうぜ、おチビちゃん」
「チビ言うな。もう来るな。今すぐ殴らせろ」
「次会う時には、ちゃんと名前呼んでくれよな」
整った顔がニコリと笑むのを確認すると同時に、ざわめく空気を肌が感じた。
視線の先、ティキの身体から無数の蝶が溢れ出す。
殺気は感じられないからこちらに害を与えるつもりは無さそうだが、完全に視界を遮断されてしまった。
思わず目を瞑ってしまい、数秒が経過して漸く瞼を持ち上げる。
周囲を見回すが、そこには無数の蝶も、ティキの姿も既に無かった。
「…ノアの一族……ティキ・ミック…か」
ああもう、冗談抜きで
「ややこしい事になりそうだなぁ…」
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!