02
『我々はキミ達を疑っています』
嫌な笑みをそのままに、ルベリエはそう言った。
あからさまに顔を顰めたクライサを気にも留めず、お前達は伯爵の手先なのだろうとその目で告げたのだ。
それ以上ルベリエが何かを言う前に、クライサが反論に出る前に、コムイが一時の解散を申し出た。
任務についての報告や質問はまだだったが、このままルベリエと話を続けてしまったら収拾がつかなくなる。
ラビと神田、イルミナが頷き、ルベリエも渋々了承した。
クライサはなおもルベリエに食ってかかろうとしたが、イルミナに抑えられそこでは頷くしかなかった。
「やっぱりあのオッサンとこ殴り込みに行こうかな…気にくわないわあの人」
「やめとけ」
「なんで!あのルベリエとかいうオッサン言い負かす自信あるよ、あたし!」
「テメェがここにいるのは何のためだ」
目を伏せたまま座禅を続ける神田に言われ、クライサはぐっと言葉に詰まる。
ルベリエが去った後、なおも怒りを露にしていた彼女を叱ったのはイルミナだった。
『修練場にでも行って座禅してくるといいわ。少し頭を冷やしなさい』
その時の事を思い出し、溜め息混じりにがっくりと肩を落とす。
「キレたり落ち込んだり忙しい奴だな」
「…あたし、こういうポジション慣れてないんだよ…」
「は?」
中央とかいうところから来た男にスパイだと疑われ、その事に対して感情的になって怒りを露にする。
それは、元の世界ではほとんどエドワードあたりの役割であり、クライサはまさにイルミナのようにそれを窘めるのが役目だった。
だから、今回のような場面に慣れていない。
「あたしより感情的になってくれる人がいれば、それを見て頭が冷えるんだけどね。こっちではなかなか無いみたい」
神田の無関心そうな相槌を聞きつつ、また盛大に溜め息を吐く。
とりあえずは言われた通り心を落ち着かせよう。
座禅に集中すべく足を組み直したところで、その頭上を飛んでいた無線ゴーレムに通信が入った。
『クライサ・リミスク、至急司令室へ。室長とルベリエ長官がお待ちです』
途端に顔を歪めた少女を横目に見た神田は、その頭へと手を伸ばす。
クライサがそれに気付かないのをいい事に、彼はそのまま少女の脳天に拳骨を落とした。
「Σいっ……!!」
「しけたツラしてねぇでさっさと行け」
「うー…」
このテンションのままルベリエには会いたくない。
痛む頭を押さえたまま渋るクライサに、神田の顔に呆れの色が浮かんだ。
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