03
「言ったろ?オレはそこのおチビちゃんと食事に行きたいだけなんだって」
「まだそんな戯れ言をほざくかコノヤロウ」
「イルミナさん、目が笑ってない」
ま、どんな好意的な理由で誘われたとしても、はっきり言ってお断りだ。
敵味方云々は別として、こいつは仮にも乙女の胸を揉みしだきやがった変態野郎(11話参照)。
心穏やかに食卓を囲む事など出来そうもない。
「…ちょっと待って。あなた、クラちゃんの胸触ったの?」
「だから誤解だって」
「何がどう誤解なのか言ってみやがれ。事実でしょ」
「揉みしだくほど膨らみ無いだろ、おチビちゃん」
「よーし歯を食いしばれー」
今度はクライサがイノセンスを発動し、逃げるティキを追いかけ回す。
それを微笑ましく見守っていたイルミナだったが、ロードの視線に気付いてそちらを向いた。
「おねーさん、名前はぁ?」
「イルミナよ。イルミナ・ウェイクフィールド」
ロードは楽しそうな笑みを浮かべたまま、ふぅん、と返す。
その目はイルミナを真っ直ぐに、まるで何かを試しているかのように見つめている。
「…おねーさん、ボクの扉を通ってきた人でしょ?」
その言葉に目を見開く。
声を聞きつけたクライサが足を止め、彼女を見た。
またティキも逃げるのをやめ、やれやれと溜め息を吐きながらロードらの方へと歩いていく。
「やっぱり、あの扉はあなたのものだったのね」
「そう、ボクの能力だよぉ」
そこでロードは、以前ティキにした『綻び』の話を語り出した。
世界に点在する、空間の綻び。
それを千年伯爵が発見し、ロードが自身の能力で干渉して、穴をあけた。
歪んだ空間に生まれた穴は、どこか特定の世界に繋がっていたようだった。
イルミナはティキ同様、理解し難い内容に眉根を寄せて首を傾げるが、クライサは伏せていた目を開けてふむと頷く。
「なるほど。その特定の世界ってのがあたし達の世界の事で、この世界と、一時的にでも繋げる事が可能なんだね」
「クラちゃん、今の説明で理解出来たの?」
「これでも天才のつく国家錬金術師ですから」
イルミナがこの世界に来る事になったのはロードが原因だ。
それはわかった。
「それじゃあ、アンタが空間に穴をあけた…その目的は何?」
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