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05




危険な仕事の際には必ず司令部全体で対応し、例えば敵アジトに乗り込む時はクライサ一人を行かせる事はなかった。
……まあ、彼女が勝手に行動してしまった時は別だが。

軍と言えばどうしても堅苦しいイメージが思い浮かんでしまうが、少なくともクライサの所属する東方司令部は違う。
命令一つにもノーと言えないような状況ではないし(拒否しても結局は従わされる時もあるが)、何よりあそこはアットホームな感じがする。

さも過酷な状況にいました的な発言をしてしまったが、まあ、彼を説き伏せるためには多少の嘘も方便って事で。

「じゃあ早速向かってもらうよ。難しい仕事じゃないからといって、気を抜かないように」

「りょーかい」

「分かりました」

司令室を出ていく背中。
白髪のそれは、最近見慣れたものになっていたが、黒髪の彼は

(リオみたい)

長い黒髪
一つにくくった髪型
高い身長

どれも、彼を思い起こす題材にしかならない。

神田はリオほど長身ではないし、眼の色だって違う。
彼と違っていつも不機嫌顔で、目つきも彼の数倍悪い。
ただ

ただ、風貌が彼に似ているだけ。

(性格なんて、リオに似ても似つかないのに)

どうして
こんなに懐かしいんだろう。


「クライサ?どうかしましたか?」

「…ううん。何でもない」

「呆けてると置いてくぞ」

「大丈夫だっての。しばくよ?このパッツン野郎」

「…テメェ…」

元の世界を懐かしんでいる場合じゃない。
少しの迷いが油断を呼ぶ。
この世界で死なないためには、この世界で生きていく事を考えるしかない。

「………大丈夫」







汽車に飛び乗り、向かったのはイギリス国内のとある街。
地図に載ってはいるが、それほど大きな街ではない。
街というよりは村に近いだろうか。

駅に降り立った時から、既にアレンが反応を見せていた。

「……いますね」

歯車のような形をした、彼の左眼。
話には聞いていたが、実際目にしてみて凄く驚いた。

アレンは以前、父をアクマにしたらしい。
だが殺されて皮を被られる前に、その左手によって父を破壊した。
その際に受けた呪いにより、アクマの魂が見える眼を手に入れたのだそうだ。






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あきゅろす。
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