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「実際にアクマと対峙してもらう事により、それを実戦訓練としようと思うんだ」

イノセンスのある場所にはアクマが集まる。
今回向かう場所も例外でなく、アクマがやって来る可能性は高い。

「イノセンスの回収はアレンくんが担当。クライサちゃんは集まってくるアクマを破壊し、神田くんはそのサポート。いいね?」

「よくねぇ!俺がこんなガキのサポートなんざ引き受けるわけねぇだろ!」

コムイの予想通り、反論して来たのは神田だった。
プライドが高く、一匹狼気質の彼としては、クライサのような少女のサポートなどしたくもないのだろう。

どう言いくるめようか。
やれやれと溜め息をついていると、不意に少女が口を開いた。

「下された命令に従えないんだ?」

アレンを挟んで、向こう側。
視線も顔も動かさずに、淡々と少女は続ける。

「サポートなんて簡単な仕事じゃんか。この程度の任務も遂行出来ないようじゃ、アンタの実力、たかが知れてるね」

「……んだと…?」

「こちとらね、どんな命令にも従って来たんだよ。殺人を命じられてもおかしくない状況で、あたしはただ首を縦に振る事しか許されなかった」

国家錬金術師として、人間兵器として。
いつ召集されるかわからない状況でも、軍に在籍し続けた。
召集されても、殺人を命じられても、決して逆らえない状況でも。

「個人の我儘で命令を拒否するなんて許されない」

現に、面倒な仕事を押し付けられた時も、上司命令で結局は逆らえなかったし?

「エクソシストにはこの世界の命運がかかってるんでしょ?なのに、アンタ個人の我儘のために簡単な仕事の拒否なんて出来るの?」

そこで漸く、クライサは神田を見た。
氷のように冷たく、焔のついた眼で。

それは謂わば挑発。
彼のようなタイプは、ちょっと刺激を与えてやるだけで直ぐに反応を起こすから。

「…………ちっ」

(なんて、ね)

舌打ちしつつも了承した神田は、知らない。
彼やアレンからは見えない位置で、クライサが悪戯な笑みを浮かべていた事を。

正直言うと、どんな命令にも従って来たというのには語弊がある。
与えられた任務をほとんど拒否した事が無いのは本当だが、シスコンな彼女の兄は元々危険な仕事を彼女に担当させなかったのだ。






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