01 「あれ、リナリー?」 自室で休んでいたところ、ノック音が聞こえたので扉を開けてみれば。 「どうしたの?」 「コムイ兄さんが呼んでるの。司令室へ来て欲しいって」 そこには、コムイの妹、二つに結った長い黒髪が可愛らしい、リナリー・リーが立っていた。 近しい年頃なので、クライサとは結構仲良しだったりする。 「コムイが?わかった」 「あ、それと」 面倒くさいながらも部屋を出ようとすると、思い出したようにリナリーが口を開く。 脇に抱えていた、布製の袋を差し出して。 「これに着替えてくれない?」 04:神の使徒 「いやー、驚いたよ」 「安心しなよ。本人が一番驚いてるから」 廊下を歩く男と少女。 アレン達の団服によく似たデザインの、白い衣服を着た男に対し、少女は黒の装いに身を包んでいる。 少女の隣を歩く男は、彼女の姿を上から下へと眺めた後に口を開いた。 「よく似合ってるよ」 ニッコリと笑って告げたその言葉は、彼女の衣服に対するものである。 これを着てくれ、とリナリーに渡された服。 アレンやラビのものと似たデザインの、黒い団服である。 クライサ好みの動きやすいハーフパンツタイプだ。 「…本当に驚いた。あたしが、エクソシストになるなんて」 先日の一件で、あの腕輪型のイノセンスの適合者がクライサである事がわかった。 異世界の住人である彼女が、神の使徒だったとは。 コムイ達も、もちろんクライサ自身も驚くしかなかった。 「これも神の意思という事さ。黒の教団は君を歓迎するよ」 「…そりゃどーも」 渡された団服に身を包み、ヘブラスカとやらに会わされて。 今度は何をさせられるのか。 面倒くさそうに溜め息を吐くと、隣を歩く彼が苦笑した。 「何もかも急で悪いんだけどね、クライサちゃん、君には初の任務に行ってもらいたいんだ」 「任務?」 本当に急だ。 全くもって急だ。 イノセンスの適合者だと知ったのは昨日の今日だというのに、いきなり任務か。 「任務と言っても難しい説明の必要なものではないよ。君はアクマを倒すだけでいい」 「……『君は』って事は他にも人がいるって事だね」 [次へ#] |