04 アクマが、傍らに建つ家の外壁に右手を当てた。 レンガ造りのそこから、瞬時に長い蔓が生まれ出る。 先程よりも遥かに少なく、その数三本。 向かってきたそれに慌てる事なく、クライサは両手を合わせた。 瞬時に凍る蔓。 だが、それに安堵する間もなく 「!!」 目の前にアクマの顔を確認した。 行動を起こす前に、捕われた細い首。 クライサが錬金術を使う際の隙を狙われたらしい。 既に崩れ去った蔓を視界に入れながら、少女は大きく顔を歪める。 「…っ、く…」 徐々に絞まる首。 呼吸が困難になってきた。 目の前のアクマは、何も言わずに少女の苦しむ姿を眺めて笑っている。 そのピエロ顔に、腹が立った。 (野郎…!!) 「必殺・目潰し!!」 「Σギャ───────ッ!!」 少女の右手指による一撃。 アクマはすぐにクライサの首から左手を離し、両の手で目を押さえのたうち回った。 原始的な攻撃方法ではあるが、案外兵器にも効果はあるらしい。 咳き込みながら、クライサはガッツポーズをとった。 「この…っ小娘がぁ──ッ!!」 未だ左手で片目を押さえたまま、空いた手を地面に下ろす。 再度蔓を作り出すと、十本を超えるそれを一斉にクライサへと向かわせた。 だが、 「甘いんだよ」 クライサの口元には、笑み。 目を見開いたアクマの視界から、蔓は悉く消えていった。 ──いや、崩れていったのだ。 「二度もモーションを見せてくれたんだ。アンタの能力はよくわかったよ」 地面に手をついた少女。 向かい合わせになったアクマと同じ体勢である。 「アンタが右手で触れた箇所から、蔓状に変形した地面や壁が伸びる」 それはアクマ自身の意思により操作され、目標物を捕らえる。 「でも、アンタが手を離した瞬間、蔓は崩れ去り」 形を失う。 そう、今彼女の目の前で起こったように。 「なら、蔓一本一本を凍らせるまでもない」 アクマは漸く気付いた。 彼の手元の地面。 「アンタの手が触れている箇所を凍らせちゃえば、能力の効果は遮断され、蔓は生まれなくなる」 彼の手の下で凍りついた、地面に。 [*前へ][次へ#] |