02
アクマが、目を見開いている。
少女が、笑みを浮かべた。
「…お嬢ちゃん」
静かに口を開いたアクマ。
合わせていた両手を離し、クライサは一つ息を吐いた。
「…何?その力」
彼女に向かっていた筈の蔓が、全て、根元から凍りついている。
アクマ自身の手は何の影響も受けていないが、その手元から。
「君、何者?」
「錬金術師」
少女は安堵した。
アクマ自身には効かないが、相手の能力はこちらの術を無効にする事は無い。
見事に凍ってくれた蔓を右の拳で軽く殴りつけながら、クライサは自身の正体を告げた。
「レンキンジュツシ…?」
「そ。残念ながら、エクソシストではないの」
エクソシストだったならば、相手を倒す事が出来たのに。
悔しいところだ。
「…そう。ただ者じゃないんだ」
「そういう事」
アクマが立ち上がる。
地面から手を離した途端、蔓達は崩れ落ち、元の土へと戻った。
相手が行動を起こしたのを確認すると、クライサは背を向け走り出す。
(あの能力は何とかなる…!)
相手自身から距離をとっておけば、勝機は無くとも時間稼ぎにはなるかもしれない。
ラビとブックマンが来てくれるまでの辛抱だ。
「…耐えろ……!!」
こんなところで死ぬわけにはいかない。
イノセンスを奪われるわけにはいかない。
自身に言い聞かせるように呟くと、駆ける速度を上げた。
「レンキンジュツ…?」
少女の背中を見つめたまま、アクマは動かない。
足を止めたままだ。
「レンキンジュツシ…」
耳にした事のない単語に、首を傾げる。
少女が只者でない事はわかった。
では、何者?
「……なんでも、いっか」
彼女が何だろうが、誰だろうが構わない。
自分はアクマ。
人間を、エクソシストを殺し、イノセンスを奪えばいい。
そうだ。
殺してしまえばいい。
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