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01




それは 予感だった。

嫌な、というと少し違うかもしれない。
ただ、知らない感覚だった。
何かが、誰かが呼んでいるような、感覚。

何かが起こる、予感。





03:銀の枷





路地裏に逃げ込んだクライサは、なおも走り続ける。
後方からは、アクマ。
立ち止まったら殺される。

「頑張るね、お嬢ちゃん」

楽しそうな声。
彼女を追うアクマは、随分と余裕があるようだ。

「頑張らなきゃ死ぬじゃん」

「それもそうだね」

気の抜けるような会話を交してはいるが、事態は緊迫している。
時折もつれそうになる足を叱咤し、クライサは必死に走り続ける。
ラビもブックマンも、まだ来ない。


「…そろそろ飽きちゃったなぁ」

背後から聞こえた言葉、気配に、少女はとっさに身をそらした。
刹那、頬スレスレを過ぎていった血の弾丸。

「上手く避けるね。…でも、これはどうかなぁ?」

アクマが片手をついた途端、盛り上がる地面。
何事かとそれに注意していると、いきなり地面から何かが飛び出してきた。

「!!」

反射的に避け、振り返るようにして確認する。

「んなっ…」

アクマの手元から伸びたのは、蔓状に変形した地面だった。
まるで錬金術が行使されたかのように形状を変えたそれは、一本どころではなく十本近く生まれていく。
少女に狙いを定めるように、鞭のようにしなっているが

(錬金術よりタチ悪くない…?)

元が地面だとは思えない。
まるで、本物の蔓が茶色に塗られているかのようだ。

「私の能力は、右手で触れたものを蔓状に変化させる事」

レベル2のアクマが持つ能力。
球体型の者達だけでも厄介だというのに、とクライサは小さく舌打ちした。

「さて……今度は上手く逃げられるかな?」

地面に膝をついたままのアクマの手元から、十本もの蔓が伸びる。
それらは一斉にクライサへと向かい、少女を捕えんとうごめいている。

「くっ…」

思ったよりも速度がある。
走っているだけでは避け切れないかもしれない。
素早く判断を下したクライサは、手にしていた腕輪を左腕に通し、両掌を合わせた。






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あきゅろす。
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