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06




息が切れてきた。
どれくらい走ったのだろう。

「…っは……、は…」

逃げろ、とは言われたが。
宛てもなく走り続けてはみたが。
一体どこまで走ればいいんだ?

(どうしよう)

走る体力はまだある。
気力もある。
問題は、どこまで逃げればいいのかだ。

教団本部なら多分安全だ。
だが、一人でそこまで行くわけにはいかない。
と言うか、一人で帰れる自信が無い(きっぱり)

と、なると

「ドンパチが終わるまで、逃げ続けなきゃならないか…?」

ラビ達と共に行動していた筈の探索部隊達は、恐らく何処かに避難しているのだろう。
アクマと戦えるのはエクソシストだけなのだから。
探索部隊はあくまで彼らをサポートする存在であり、アクマを破壊する力は持たない。
つまり、彼らを頼って行ったとしても、アクマに見つかってしまえば意味が無い。
彼らもろとも殺されてしまい、イノセンスも奪われてしまうだろう。

となれば、アクマそのものを何とかするしかない。
追ってくるものが存在しなければ、逃げる必要は無いのだ。

(…要するに、)

ラビとブックマンが、この街にいるアクマを全滅させる。
それを、クライサはただ走り回って待つしかない。

「長い戦いになりそうだなー…」

「そうでもないよ」

「…!!」

溜め息をついた瞬間、耳元でした声。
反射的にそこから離れ、『それ』と向き合う。

「人間にしては随分足が速いね。お嬢ちゃんもエクソシスト?」

楽しげに笑うアクマ。
球体ではなくピエロのような外見をしている。
レベル2だ。

(ヤバいかも…)

明らかに、球体型のアクマ達より強い。
レベル1の奴らにすら錬金術は通用しなかったのだ。
成す術の無いクライサに、勝機はあるのだろうか。

「さあ。どうやって殺して欲しい?」

「あはは…出来れば見逃して欲しいね」

「面白い事言うね。でも、無理」

「…だよね」

(ごめん、ラビ)

殺気を浴びて、背筋が凍る。
手の中の腕輪を強く握り締めた。




【H19/03/22】

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