02
手にしていた本を棚に戻し終えると、クライサは溜め息をついた。
予想していた事だが、やはり元の世界に戻るための手掛かりはそうそう見つからない。
本を読み始めてから、かれこれ三時間が経過していた。
「ラビ…遅いなぁ…」
すぐ戻ってくる。
そう言ったのに。
「イノセンスの回収って…何時間もかかるようなものなのかなー…」
再び溜め息をついて、新たな本を取ろうと本棚に手を伸ばした、その時、
「!!」
ドン、という大きな音。
それに次いで、音同様に大きな揺れが図書館を襲った。
(地震?…いや…)
揺れは一時でおさまったが、巨大な音はなおも鳴り続いている。
図書館内では悲鳴が上がり、利用者達は座り込んで恐怖に耐えているように見える。
その様子を目にしながらも、クライサは出入口へと駆け出した。
(あたしが出て行って、どうするの?)
扉の前で、足が止まった。
この音の原因は、おそらくアクマだ。
ラビ達が回収に行ったイノセンスを狙って来たのだろう。
(多分、ラビはアクマと戦ってる)
この建物を出たら、そこはきっと戦場だ。
エクソシストとアクマが戦っている筈。
その戦場の中に入って行って
(あたしに、何が出来る?)
再び大きな揺れが建物を襲う。
クライサはそれを、付近の壁に手をつきやり過ごすが。
「きゃあ!!」
突然の衝撃に、利用者達の中から悲鳴が上がる。
母親の腕に抱かれた幼い少女が、とうとう泣き出してしまった。
それだけで十分だった。
彼女が行動を起こす理由。
それだけで、彼女の迷いは瞬く間に消え失せた。
「あんなちっさい子、泣かせるんじゃねーっての」
ごめん。
心の中で、言いつけを破る事に謝罪する。
クライサは勢いよく扉を開けると、外界へと飛び出した。
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