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04




食事を終え食堂から出ると、ラビ達と別れ自室へと戻った。
ベッドに腰掛け、溜め息を一つ。

(アクマ、か)

こちらの世界にやってきてすぐに遭遇した、謎の物体。
球体状の身体から、いくつもの銃口が突き出した形のそれ。
その血でできた弾丸を銃口から撃ち出し、そこに含まれたウィルスで人を殺す。
撃ち込まれると、ウィルスが急速に体内を侵食し、その体は砕け散る。

クライサのような国家錬金術師は、人間兵器と称されるほどの力を持つために、軍の狗よ悪魔よと罵られる事もある。
だがアクマは、その『悪魔』とは全く別の物なのだ。

アクマとは、魂を内蔵した生きる兵器。
その魂は『千年伯爵』と呼ばれる製造者に支配され、罪に苦悩し己の姿に絶望し現実を憎悪する。
そんな魂のフラストレーションが、アクマを進化させるエネルギー源になるのだ。

『アクマは“機械”と“魂”と、“悲劇”を材料に造まれるんです』

人には誰しも心に闇がある。
その闇が“悲劇”によってより深くなった者の所に、製造者が現れアクマを造む。
イノセンスと対の存在といえる暗黒物質、ダークマターで造られたボディに魂を取り込む事で、死した者を復活させる。
それには、その魂との絆がある者の『呼び声』が必要となる。
名を呼ばれた魂はボディに取り込まれると、その瞬間から製造者に支配され、自身を呼び戻した者を殺し、その死体を被る。
そして人間の姿で社会に侵入し、人を殺して経験を積み、進化する。

(信じられないよね…)

そんな恐ろしい兵器が、この世界にはウヨウヨいる。
そんな恐ろしい世界に、何の因果かクライサはやって来てしまった。

(アクマはイノセンスでしか破壊出来ない…か)

クライサは、自身の両手に目を落とした。
『創り出す』事の出来る、錬金術師の手。
しかし、アクマを破壊する事は出来ない。

初めてこちらに来たあの日、アクマから自身を守ってくれたのはラビだった。
錬金術が通じず危機に陥った彼女を、彼は救ってくれたのだ。

(錬金術が使えても、通じないんじゃなぁ…)

アクマと戦えない。
ラビ達の力になれない。

クライサは、その手を堅く握り締めた。




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