06 結局そこでクロスを発見する事は叶わず、次に行くため近くの街に寄った。 次の目的地は、ここから汽車で三時間程行った所。 日も落ちていたし、何が起こるかわからないので、この街で一晩を過ごす事になった。 集団行動嫌いの神田が抜け、とりあえず宿屋だけは全員同じにして、明朝までは自由行動として。 夕食時になるまでと、クライサは街に散歩に出掛けた。 「よう、おチビちゃん。元気にしてたか?」 「あーっと手が滑ったー」 「Σおごふぅっ!?」 そんな矢先に黒いお兄さんが立ち塞がったので、スクリュー的なボディーブローを食らわせてみた。 「ちょ、おチビちゃん容赦ねぇな…声かけただけなのに」 「ちっ…まだ息がありやがんのか」 「待ってお願い、イノセンス発動しないで」 腹を押さえて蹲っていた男が必死に土下座をするので、仕方なく戦闘体勢を解いてやった。 日が落ちて数時間もしない大通り。 こんなところで戦いになったら、人を巻き込まない自信は無い。 っていうか先程から向けられる通行人からの視線が痛い。 とりあえず人通りの少ない路地に移動して、何をしに来たんだと天パのノアに尋ねてみた。 ちなみに彼は、以前とは違ったラフなワイシャツ姿で、肌も普通の色をしている。 額には聖痕も見当たらず、ただの人間にしか見えない。 私服姿のクライサと並んでは、エクソシストとノアには見えないだろう。 「何しにって、会いに来ただけだけど」 「はぁ?」 「言ったろ、気に入ったって」 男は身を屈めると、怪訝そうに首を傾げる少女の右手をとる。 その仕草があまりに自然で敵意を感じなかったため、クライサは抵抗する事を忘れていた。 「一緒に食事でもどうですか、リトル・レディー?」 少女の手を乗せた男の右手が持ち上がる。 身を屈めた彼は視線をクライサへと向けたまま、その甲に口付けた。 【H21/03/23】 [*前へ] |