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05




未だ俯いている彼女は拳を強く握って肩を震わせている。
一体どうしたんだとラビが見つめ、神田とイルミナが眺める先で、漸く口を開いた。

「…ふ……くっくっくっ…」

笑ってらっしゃる。
ラビと、さすがの神田も固まった。
顔を伏せたまま肩を揺らし、くつくつと笑うその姿は、夢物語のヒロインには到底見えない。
冒険物ゲームのラスボスだと言われても納得出来るくらいだ。

ニヤリと一際深い笑みを刻むと、ラスボス様、もといクライサは勢い良く顔を上げた。

「そうだね、忘れてたよイルミナさん。あたしはやりたい事をやりたいようにやるだけで良かったんだ。他人の意思・意見なんか関係無い、全ての判断はあたしがすればいい。むしろあたしが世界のルールブック!邪魔者は問答無用で全部消してやりゃあいい!!

うわー、なんかスゲェ事言ってるよ、あいつ。
終いには魔王的高笑いを始めた少女に、青年二人はもう何を言う気にもなれなかった。
イルミナは相変わらずニコニコ笑んで魔王様の演説を聞いてらっしゃる。
なんだ、異世界の人間ってみんな何かおかしいのか。

「あ、あのー、クライサさん?」

「ラビ!!」

「Σはいぃ!!」


地面(アクマの体)を蹴った少女が、瞬間移動並の速さで目の前にいた。
なんだこの子。

「やっとスッキリした。ミスティの事、ちゃんと消化したよ」

心配かけてごめんね。
眉尻を下げて困ったように笑ったクライサに、先程までとは違った意味で呆気にとられた。
神田もね、と彼に振り返って笑った少女を包むのは、出会った当初と同じ、ありのままで無邪気な空気。
これが彼女の素顔なのだと理解して、ラビは無意識に微笑んだ。

イルミナへと視線を向けると、ウィンクが返される。
先日の会話を思い出して、しかしもう彼女は大丈夫なのだと思った。
きっとクライサは、これからの生活を目一杯楽しむ事だろう。
心を閉ざす事なく、教団に繋がれながらも、その身を包む青色が示すように、自由に。

「伯爵のやつめ…次会ったら思う存分ぶちのめしてくれる…!」

悪人面でクスクス笑う少女の姿に、本当に大丈夫なのかと心配になった。






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