04 「やっぱりクラちゃんらしくないわね」 何やら盛大な溜め息を吐かれた。 とりあえず文句を言う前に彼女の言い分を聞こうと、足を止めたまま首を傾げる。 「あなたはそんな事で迷う子だった?何が間違いで何が正解か、その判断を他の誰かに任せる子だった?」 「………あ」 蓋がずれる。 中身が溢れ出てきたが、しかしそれは彼女の心を満たしはしなかった。 「あなたは、したい事をする子じゃなかった?」 ああ、なんだ。 こんなに簡単な事だったのか。 蓋が落ちて、複雑な思いを収めていた器が粉々に砕けた。 溢れた思いはすぐに蒸発して、どんよりとした重みが呆気なく消え失せる。 心が軽い。 「ミスティという人間が殺された時、あなたは何を思ったの?どうしたかったの?」 「……本当だ。あたしらしくなかったね。一番大事な事、忘れてた」 俯いて肩を震わせる。 比例して、拳を作った両手も小刻みに震える。 イルミナは満足気に微笑んでいる。 「あ。クラにイルミナさんさ」 通りの奥からラビと神田が歩いてきた。 おーい、と手を振る彼にイルミナはヒラヒラと右手を振り返すが、背を向けたままのクライサは俯いたまま反応しない。 彼が訝んで声をかけるより早く、彼女らを影が覆った。 「!!」 アクマだ。 ラビと神田、そしてイルミナが見上げた空に浮かぶアクマが、地上の彼らに銃口を向けていた。 破壊し損ねていたのか、どこかに隠れていたのか。 神田とイルミナが剣を、ラビが槌を握る。 しかし、彼らが攻撃に出る暇は無かった。 「へ?」 ラビの上げた間の抜けた声に、頬を蹴られて地面に叩きつけられたアクマの悲鳴が重なる。 なんかすげぇ勢いで落ちた。 起き上がれない巨体の上に、それより何回りも小さい少女が着地した。 踏みつけるようなポーズでアクマに乗っている少女は、先程まで地上にいたクライサだ。 ってオイ、イノセンス発動させてもいねぇよ。 ラビはいまいち展開についていけていない様子で、ツッコミを入れてもいいのかタイミングをはかっていた。 [*前へ][次へ#] |