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02




細身の紅い刀身は深みを増し、纏った炎は更に紅く輝いて、鋭い斬撃と共にアクマに襲いかかる。
傷口から走る紅は瞬時に巨体を包み、断末魔すら声にならずに兵器は燃えかすに変わっていった。
炎を司るその剣の名は『緋焔(ひえん)』。
イルミナを適合者とするイノセンスである。

「お待たせ。終わったわよ」

血を払うような動作で剣を振ると、それを纏っていた炎は僅かな紅を残して消え去り、元の色を取り戻した刃は鞘の中へ身を潜める。
息を乱した様子も無い彼女が歩いてくるのを、クライサ達は笑顔で迎えた。

イルミナが教団にやって来て一週間が経った。
こちらでの生活にも慣れてきた彼女を加え、エクソシスト年少組の五人にはある大仕事が任された。
最近、いくつかの町が不特定に襲われ、滅ぼされ、アクマの住み処にされる事件が続いている。
占拠された町(もはや廃墟でしかないが)を解放し、そのいずれかの町にいるとされているある人物を捜し出す事が、彼らに与えられた任務だ。

ここで、群れるアクマを破壊し解放した町は二つ目。
捜索対象の人間はまだ見つからない。

「っていうかさ、本当にこんな廃墟にいるの?…えーと、なんだっけ、クロス元帥?」

クライサの問いにイルミナが同意するように頷く。
対するアレン達は何故だか浮かない表情だ。

捜索対象はクロス・マリアンという元帥で、アレンの師匠である。
なんでわざわざ捜さにゃならんねんとか、何の用があってこんな廃墟におるねんとか、聞きたい事は山程あるのだが、僕だって知りませんよと逆ギレされては再度口に出すのは躊躇われる。
まあ、何か理由があっての事だろうと無理矢理納得。

「僕としては、確実でないとは言え、なんで教団が師匠の居所を知っているのかが疑問なんですけど…」

「あら、何か問題があるの?」

「と言うか、行方くらますの得意なんですよ、あの人」

アレンが纏う空気が暗い。
クロスを捜せとコムイに命じられてからずっとこんな調子だ。
そんなに師匠に会うのが嫌か。

「って事は、下手うって尻尾をつかまれたか、元帥自身がそうなるように仕組んだかのどっちかだよね」

「そうなるな。クロス元帥の事だから前者は多分無いと思うけど、後者だと理由がわからんさ」

「そだね。見つけて欲しいってんなら、そんなまだるっこしい事しないで自分から帰ってきそうだし」

「きっと僕らをおちょくってるんですよ、あの人性格悪いし」

「(アレンが黒ーい…)」
「(空気が重ーい)」
「(アレン君…)」
「(……)」
「(よっぽど会いたくないのね…)」






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