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01




右手を伸ばし、対象を凍てつく空気で包む。
氷像と化した巨体を足場にして更に上空へと身を躍らせ、空中に生み出した刃を雨と降らせた。
鋭く尖ったそれは、こちらを見上げた殺戮兵器達の身を貫き、破壊する。
重力に従い地面へと向かう少女は、途中で氷で作った足場に下り立ち、足を滑らせる事なく体勢を立て直した。
周囲に敵の影が無い事を確認すると、足場を消滅させ、同時に倉庫らしき建物の屋根に飛び移る。

数日前に人為的に滅ぼされたこの町は、今やアクマとエクソシストの戦場になっていた。
崩れた建物、所々に見られる血痕、打ち捨てられた死体。
先程までアクマに埋められていた町の全貌が漸く見えてきた。

「……こんなとこに本当にいんのかなぁ」





13:暴君の復活





「クライサ!」

呼ばれて、声の聞こえた方へと視線を向ける。
地上に数名の人影を見つけた。
アレン、リナリー、ラビ。
名を呼んだのはアレンだったようだ。

「片付いたの?お疲れ」

「お疲れ様。そっちも?」

屋根から飛び下りて彼らに近付けば、リナリーが返して首を傾げる。
彼女の目は、クライサを見た後、すぐそばの建物の壁に寄りかかっている神田へ向けられた。
腕を組んで目を伏せている彼は、リナリーの視線には気付いているだろうが、答えない。

「もう終わると思うよ」

笑みを浮かべて返したクライサは、所々破壊された通りの先を見た。
つられて少年達もそちらを向く。
その刹那、いくつかの建物が爆音と共に崩れ、一つの影が飛び出してきた。
剣を握った女性だ。
五つの大きな影がそれを追い、あっという間に彼女を囲む。
少年達が駆け出そうとするのを片手で制し、クライサは能天気ともとれる声を上げた。

「イルミナさーん、そろそろ満足したー?」

少年達の視線の先で、アクマに囲まれた女性が手を上げた。
剣を握ったままで振る動作をしたのを見て、身構えていた体から力を抜く。
軽く振り向いた横顔は笑っていた。

「すぐ終わらせるからちょっと待っててね」

返ってきた声も、表情と同じように笑みを含んでいるのに気付いて、クライサが苦笑する。
神田が壁から背を離した瞬間、火柱が上がった。






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