06
だが、クライサだけは違っていた。
首を捻った体勢のまま、腕を組んで難しい顔をしている。
「どうした、チビ」
「いい加減、その呼び方やめないと殺すよ」
ラビの考えには、不自然な点がいくつもある。
まず村人は、屋敷の者と接する事こそ少ないが建物のそばを通る事はしばしばあった筈だ。
なのに、一人の人間が長い期間同じ姿で生き続けている、と思うほど、数人の『同じ姿』を見ていた……というのはおかしくはないか?
「……つまり何が言いたいんだ?」
「ああゴメンゴメン、馬鹿にもわかるよう説明しなきゃね」
「テメ…」
「人間ってのは成長する生き物だよ。長い時間が経っているなら、人も相応に歳をとり、外見も変わる筈」
ミスティのような少女の姿をしている時期なんて、人生のうちほんの少しだけだ。
なのに『少女を見た』という村人みんなが、同様の姿をした人物しか目撃していない。
様々な年代、様々な時期にこの屋敷の近くを通っているにも関わらず。
「そして次に、少女以外の人間を見たという村人がいない」
最近はラミアンやアルバートが見かけられる事はあるらしいが、彼らがここに来る前は、他の使用人や家族の姿は見られなかったらしい。
「これはおかしいでしょ。母親の代はまだしも、祖母や曾祖母が生きている時に、旦那の姿が全く見られていないなんて」
「たまたま別居してたって事は無いのか?」
「代々男子は屋敷の外で暮らす事になってるって?そんな都合のいい事、そうそうないよ」
そして、最後に。
「これは何の根拠も無いんだけど……科学者の勘。この屋敷は普通じゃない」
建物がおかしい、という意味では無いのだが、この屋敷に入ってから今までずっと、何かの違和感を感じる。
何がおかしいのか、なんてわからない。
ただ、何かが納得いかない。
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