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開かれた大きな門をくぐり、屋敷の玄関口と思われるこれまた大きな扉の前に立つと、こちらが行動を起こす前に扉が動き出す。
客を招き入れるかのように開かれたそこから、クライサ達は屋内へと足を踏み入れた。

「ようこそいらっしゃいました」

高級ホテルのロビーのような広い玄関を抜け、広間の奥に見える大階段の手前に、彼女はいた。
レースがふんだんにあしらわれたドレスに身を包み、深々と頭を下げた幼い少女。
ウェーブのかかった長い茶髪が、滑らかな動きに合わせてふわりと揺れる。

「この屋敷の主、ミスティ・ハーミットと申します」

「クライサ・リミスクです。こっちの赤髪がラビ、黒髪の方が神田」

奥へどうぞ、と促され、少女に続いて階段を上る。
二階の一室に案内されると、そこには大きく細長いテーブルが一つ設置されており、椅子がいくつも並べられていた。

クライサはその中の一つに腰を下ろし、その隣にラビが、向かいに神田が腰掛ける。
少女は彼らから一番離れた、テーブルの辺の短い部分の席に座り、その両脇に使用人らしき二人が立った。
一人はスーツ姿の、青みがかった黒い短髪の青年。
歳は20代前半だろうか、眼鏡をかけた顔は知的に見える。
もう一人はメイド服を着た、セミロングの金髪を一つに束ねた女性。
こちらも20代前半だろう、青年より少し若そうに見えた。

「御用件を伺いましょう」

出された紅茶に口をつけ、一息ついた頃に少女は言った。
その口調は10歳やそこらの子供とは思えないほど落ち着いており、しっかりしている。
やはりコムイの言っていた話は本当なのだろうか。

「森を抜けて隣の村に向かおうとしてたんだけど、コイツの方向音痴のせいで迷っちゃって。道を聞こうと思って、たまたま見えたこの屋敷を訪ねたの」

そう言って、クライサが指差すのは神田。
指し示された彼は不機嫌そうに眉を寄せたものの、余計な事は言うべきでない、と口を開きはしなかった。






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