06 「そんな山奥に、神田なんかと一緒に行かなきゃならないなんて…」 「だから言ったろ、コムイ。俺一人で十分だって」 睨み合っている二人に、ラビは溜め息をつき、コムイは苦笑する。 クライサ達の様子を見る分には、本気で嫌そうにしている神田と違い、彼女は彼をからかっているような笑みを浮かべている。 言い合う事を楽しんでいるように見えた。 (クラのやつ、ユウの事意外に気に入ってんだな) ラビは僅かに口元を笑みに歪め、コムイに向き直った。 「そんで、今回はどんな村なんだ?まだ村名ぐらいしか聞いてねぇけど…」 「それはこれから説明するよ。まずはそれを見てくれ」 リナリーにより配られた資料に目を落とす。 一番上の紙に貼られた写真には、ウェーブのかかった長い髪の少女が映っている。 まだ10歳やそこらではないだろうか。 良家のお嬢様のようだ。 「その子は村のそばにある森の中に住んでる子でね。村人の話によると、200年間そのままの姿で生きているらしい」 「200年…?」 「イノセンスの可能性がある…って事か」 「そう。不老不死の人間なんている筈ないんだ。君達には、直接現地に出向き彼女について調べてもらう」 (不老不死、ね) コムイからの説明を聞いている間、クライサは自身の両手を見下ろしていた。 不老不死、と聞いて思い出すのは、人造人間(ホムンクルス)の存在。 この世界に錬金術は無い筈なのに、もしかしたら、なんて思ってしまう。 馬鹿馬鹿しい。 「クライサちゃん?」 「…ううん、何でもない。じゃあ行ってくるよ」 余計な事は考えなくていい。 今は、今するべき事をこなしていくだけでいい。 部屋を出ていった神田とラビに続き、彼女もまた司令室を後にした。 何が待っているかなんて、知るわけがなかった。 【H19/09/29】 [*前へ] |