02 クライサに向け撃たれた血の弾丸が、空中で動きを止める。 凍りついたそれらを確認すると、そこで少女は手を下ろした。 同時に幾つもの銃弾も地面へと落下し、音を立てて粉々に割れる。 「終わりにしようか」 何が起こったのか、少女の能力が何なのかわからないアクマ達は、彼女に銃口を向けたまま呆然としている。 それに満足げに笑みを浮かべ、クライサは再び持ち上げた右腕を横へ凪いだ。 一瞬にしてアクマ達の周りを囲む、大量の氷のナイフ。 日の光を反射し、そのどれもが輝いているように見える。 肩の高さに上げた腕を伸ばしたまま、右手の中指と親指を擦り合わせた。 パチン、という小気味よい音が響く──と同時に、アクマの体に突き刺さる刃。 数え切れない程のナイフによる攻撃をその身に受けたアクマ達は、けたたましいまでの絶叫と共に破壊され爆発した。 「おっし、いい感じ!」 彼女を囲んでいたアクマは全て葬られ、残った者は見当たらない。 イノセンスの発動を止め、氷釧を元の腕輪の形に戻したところで、彼女から離れて戦っていた神田が民家の屋根から降りてきた。 六幻を鞘に収めながら、戦闘を終えた少女へと目を向ける。 「……フン。少しは出来るらしいな、チビ」 「出来なきゃ死んでるでしょ」 相変わらず鋭い目付きで見下ろしてくる相手に、クライサはやはり笑みを浮かべて返した。 その表情や口調、態度にも余裕が見られ、神田は不機嫌そうに眉間に皺を刻む。 「それから、あたしにはクライサ・リミスクっていう素晴らしい名前があるんだから。勝手な呼び方しないでよ」 「うるせぇ。チビをチビと呼んで何が悪い」 「あたしはチビじゃない。故にあたしをチビと呼ぶ事は悪い事に値する」 断言し、クライサは目の前に立つ青年を力いっぱい睨み付けた。 だが、神田は怯むどころか見下したような視線を少女へ送り、はっ、と鼻で笑ってみせる。 「…いい度胸だね…このあたしにケンカ売った事、存分に後悔させてあげるよ」 「はっ!テメェみたいなガキに負けてやるほどお人好しじゃねぇんだよ」 青年と少女の周囲で、澱んだ空気が渦を巻く。 二つの視線が火花を散らしているところに、少年の声が届いた。 [*前へ][次へ#] |