01 元の世界に帰るためには、今ここで死ぬわけにはいかない。 帰る方法を探すため。 生き延びるため。 あたしは、闘おう。 05:氷の意志 突き出した右腕の、手首。 そこに通された銀色の腕輪が、淡い光を発する。 「エクソシストみっけ!」 少女の姿をその目に捉え、多くのアクマ達が上空から彼女を狙うが、クライサは慌てる事すらしない。 光を放つ釧から離した目を、アクマの群れへと向けるだけだ。 「──行くよ。『氷釧(コールド・ブレス)』」 腕輪が放っていた光が包帯のような形を作り、少女の右腕へと巻き付く。 肘の付近まで腕を覆ったそれは赤く色付き、光がおさまった頃には、既にクライサの姿は空中にあった。 「まだ慣れなくてさ。手加減出来そうにないんだ」 彼女を狙い銃口を向けていた筈のアクマは、視線の先にいた少女が姿を消した現状についていけなかった。 勿論、背後から聞こえた声が彼女のものだなんて事も分かる筈がない。 「悪いね。壊すよ」 少女の腕を覆う、赤色のそれ。 包帯状にそこに絡みついたそれは、鋼鉄のような硬さを持っている。 当然、その鋼鉄を甲の部分にまで巻き付けた右手は、拳を作れば相当の威力をもつわけで。 右手を堅く握り締めたクライサは、目の前のアクマの後ろ姿へとその拳を叩き込んだ。 ──ピシィッ… アクマはその身に起きた事を理解する事も、悲鳴を上げる事も叶わず、一瞬にして凍りつく。 同時に、粉々に砕け散った。 それを目にした残りのアクマ達は一斉にざわめき始め、目の前のエクソシストに銃口を向ける。 クライサは特に慌てた素振りは見せず、右の掌をアクマ達へと向けた。 [次へ#] |