04
「ここにやって来た理由、ですか?」
百聞は一見にしかず、とは少し違うが、直接本人に尋ねる事にした。
ミスティの部屋を後にし、今はアルバートの自室にいる。
クライサの問いに、彼は少し躊躇いがちにではあったが、口を開き説明を始めた。
彼の母親は、以前この屋敷でミスティに仕えていたそうだ。
故郷に戻りアルバートを産み、その二十余年後、母は亡くなった。
その事をミスティに知らせるため、彼は遠く離れた町からはるばるやって来たらしい。
「……おかしいよなぁ」
「ああ。嘘としか思えねぇ」
部屋を出て、廊下の隅で円になって屈み込む。
端から見たら異様でしかないその光景だが、幸いそこにはクライサ達以外の人間はいない。
「ハーミットの家から使用人達が去ったのは、イノセンスが発動した10年後だろ。年代が全く違うじゃねぇか」
「やっぱアルバートはアクマなのか?こりゃ、早めに手を打った方がいいらしいさ」
彼は敵だ、と判断した神田とラビは、さっさと話を進めていく。
ここにいてはアクマに襲われてしまうかもしれないし、彼女のイノセンスはよく調べる必要があるだろうからと、ミスティを教団本部へ連れて行く事に決定したらしい。
早速本人に告げに行こうと立ち上がるが、クライサだけは未だ難しい顔でその場を動かずにいた。
「クラ?」
どうかしたか、とラビが問う。
クライサは表情を変えない。
「…アルバート、嘘ついてるようには見えないんだよなぁ」
「んな事言ったって、ミスティの話と合わないのは明らかだろ?それとも、ミスティが嘘ついてるってのか?」
「ううん。ミスティの話は本当だと思うよ」
だから納得いかないんだ。
顎に手をあてながら立ち上がる彼女に、神田が不機嫌そうに顔を歪める。
あ、マズイ。
不穏な空気を感じてラビが後退る。
だが
「「!!」」
口を開こうとした神田が、突然彼女らに背を向け、鋭い視線を窓にやった。
クライサも同様に表情を険しくし、周囲の気配を探る。
ラビだけが、何事かと首を傾げていた。
「ユウ、クラ、一体どうし……」
「殺気だ」
「へ?」
短い言葉を置き去りにして、六幻片手に走り出す。
その背はみるみるうちに小さくなっていき、そして見えなくなった。
何が何だかわからないラビの横で、クライサは窓の外を指差す。
そこで漸く、彼はこの屋敷を襲わんとしている敵の存在に気付いた。
少女が、不敵に笑う。
「腕が鳴るねぇ。お客さんがいっぱいだ」
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