06 ラミアンの破壊の後、すぐに視線を走らせたが、伯爵の姿は既になかった。 残ったのはクライサとラビと神田、そしてミスティの遺体と血溜まりだけ。 「……クラ」 ミスティの身体を抱き締めたまま、クライサは動かない。 ラビが肩に手を置いても、神田の舌打ちが聞こえても。 「……ねえ、ラビ」 あたしは誰を憎めばいい? 少女を見下ろす空色の目に、普段の強い光が見られない。 誰を憎めばいい? 誰を恨めばいい? ミスティを殺したラミアンか? ラミアンを唆した伯爵か? ミスティに不老不死を与えた神とやらか? 「どうしてミスティは、こんなに苦しまなきゃならなかったの…」 どうして、こんなに無惨に殺されなければならなかったんだ。 どうして、イノセンスを与えられなければならなかったんだ。 どうして、もっと早くここに来られなかったんだ。 どうして、命を失った彼女は こんなに穏やかに笑っているんだ。 「誰かを憎みたいなら伯爵を憎め。アクマを憎め。テメェはエクソシストだろ」 「………そうだね」 泣きたかった。 この、言いようのない思いが全て流されてくれるなら、泣いてしまいたかった。 こんな思いをするのなら、彼女と話なんてするんじゃなかった。 優しい微笑みなんて、見るんじゃなかった。 (ねえ、ミスティ) 永遠という苦しみを抱えていた彼女に、漸く安らかな眠りが与えられた。 けれど、生きていて欲しかったと思うのは (あたしのエゴでしかないのかな?) 【H20/06/17】 [*前へ] |