02 教団への出発は翌朝と予定し、クライサ達はそれぞれの部屋で夜を明かす事になった。 「月が…」 窓の向こうに見える月が、紅い。 (どうしてだろう、) 胸騒ぎが、する。 カーテンを閉めても、脳裏に焼き付いてしまった紅が頭を離れない。 もう寝てしまおうかとベッドに目を向けたその時、感じ慣れてしまったそれに気付いた。 殺気。 (アクマだ) 直ぐ様上着を手に取り、羽織りながら窓を開けた。 悩みのたねとなりつつある紅い月をバックに、球型のアクマが数十体。 中にはレベル2のものも何体かいる。 窓枠に足を掛け庭に飛び下りると、既に神田とラビが臨戦体勢をとっていた。 「ラビ!神田!」 「クラ!」 「やっと来たか」 神田の舌打ちを気にしている場合じゃない。 相手が襲いかかってくる前にとイノセンスを発動させ、いつでも応戦出来るようにする。 と、ラビがこちらを向いた。 「クラ、お前はミスティのそばにいろ」 「は!?馬鹿にしてんの!?」 アクマとの戦闘経験がまだ浅いから、楽な役を回してくるのかと思った。 だがラビは、違うと返して首を振る。 ラビや神田の睨んだ通りアルバートがアクマなら、この機に乗じてミスティを襲っても不思議ではない。 それを防ぐため、信頼出来る彼女に頼んだのだ。 若干渋々といった様子だが、頷いた彼女にラビは微笑んだ。 そして巨大化させた槌を構え、視線を向ける。 その意を理解したクライサは一時距離をとり、上を向いた槌の片面に飛び乗った。 「さっさと片付けなよ」 「任せとけって」 ラビが振り上げると共に、クライサが面を蹴る。 元々跳躍力の高いクライサだ。 二階の彼女の部屋に到達するのに苦労はなかった。 窓枠に、飛び下りる時とは逆に足を掛け、室内に体を滑り込ませる。 ミスティの部屋は四階だ。 部屋を飛び出し、廊下を通り、階段を駆け上がる。 杞憂ならいい。 けれど、もし、 もしも、手遅れだったら そう考えるのが、恐ろしくて仕方がない。 [*前へ][次へ#] |