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04




もしミスティが不老不死でなかったなら、こんなに思い悩む事はなかったのかもしれない(そうだったら、そもそも、彼女を訪ねる理由もないのだろうけど)。
自分の力が及ばず、不幸にも、不運にもアクマに殺されてしまったごく一般的な少女だったら、こんな、名も知らぬ感情を抱く事はなかったのかも。

「クラ」

呼ばれて、隣に目を向けた。
ボックス席(贅沢にも個室だ。まあ、任務で列車を利用する時はいつもこうなのだけれど)の廊下側に座っているラビが、こちらに何かを差し出している。
彼の手の中を見下ろした瞬間、それが何かを理解し、両手で包むようにして受け取った。

カプセルのような物に入ったキューブ状のもの。
ミスティのイノセンスだ。
ラミアンを破壊した直後に床に転がったのを、伯爵に破壊されるのを防ぐため、ラビが確保していたのだ。

「それはお前が持ってろ。お前から、ヘブラスカに渡してやれ」

「うん」

「元気出すさ」

「あたしはいつでも元気だよ」

ポンと頭に置かれた手を引き剥がした。
そっか、と笑ったラビ。
無言でこちらを見ている神田。
喉に何かが詰まったような、気分の悪さに吐き気がする。



アルバートは一人、屋敷に残ると言って、クライサ達を見送った。
教団に来るかと誘ったのだが、自分がここを離れては屋敷が荒れてしまうからと、やんわりと断られたのだ。

実体化した霊体である彼は、食事や睡眠を必要としない上に、普通の人間とは違う時間に在る。
姿かたちはそのまま、何十年、何百年と生きていられるのだ(いや、死んでいるのだけど)。
彼は、ミスティ達の墓と屋敷を、力尽きるまで守ると言っていた。

『リミスク様。私の力は有限です。永遠ではありませんよ』

別れ際、浮かない顔をしていたクライサに、彼は笑って言った。
彼女の心情に気付いていたのだろう、その言葉に漸く、クライサは笑顔を返す事が出来た。

『ありがとう、アルバート』

そう彼はイノセンスを所持しているわけではなく、不老不死でもない。
力が尽きれば、魂は本来在るべき所へ向かうだろう。
けれど、彼が消える場所はあの屋敷。
彼は、ひとりではない。

『……さよなら』






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あきゅろす。
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