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01




『母の死をミスティ様に知らせるため、この屋敷にやって来たのです』

アルバートの言葉は、クライサの思った通り、嘘ではなかった。

ハーミットの屋敷を流行り病が襲った時にひまを出された彼の母は、故郷に戻りアルバートを産んだ二十数年後亡くなった。
それが本当だとすると、彼は二百年近く生きているという事になる。
だがミスティと違ってイノセンスを持っているわけではなさそうだ。

さて、この話の真相は?





09:氷のこころ





新たに加えられた墓石の前に膝をつくアルバートを、その背後に立つラビと神田は黙って見ていた。
クライサは、彼らから離れた位置につくられた花壇の淵に腰を下ろし、ただただ押し黙っている。

ミスティのイノセンスの事やラミアンの正体、彼女らの死。
それらの説明を全て聞いたアルバートは、そうですかと、悲しげに微笑んでいた(説明の間、クライサは口を開く事をしなかった)。

「私は以前、ここから少々離れた町に住んでおりまして、ミスティ様を訪ねるのにかなりの時間を有してしまいました」

母は生前、よくハーミットの屋敷での事を話してくれた。
自分は使用人という立場だったけれど、それを忘れてしまうほど毎日の生活が楽しくて、屋敷では笑顔が絶えなかったと言う。
特にミスティと仲が良かったという母は、幼いアルバートが寝付けない夜、絵本を読みきかせる代わりに若い主の話をしていた。

だから、『ミスティ・ハーミット』という人に興味があった。
母の死を知って欲しかった。

幼いうちに父を失い、母を亡くした事で一人になった彼は、すぐに目的の屋敷へと出発する。
仕事は長い休みをもらったし、貯金もそれなりにあったし。

しかし青年は、旅の道中──目的地まであと少し、というところで列車事故に巻き込まれ、命を落とした。






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あきゅろす。
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