05
「そんなに悩んでる理由は、やっぱりミスティ?」
「違うよ。……違う」
自分はこの世界の人間じゃない。
だから、この世界の事で頭を悩ませる必要は無い。
そう気付いてから、彼女の事は心の重みにはならなくなった。
だが
「この世界の事はあたしに関係ない。そう気付いたばっかなのに…この世界は、あたしに現実ばかりを見せつける」
教団にいる事と、司令部にいる事。
エクソシストや科学班に囲まれる事と、上司や部下達に囲まれる事。
重なる事が多過ぎて、嫌になってくる。
「あたしがどんなに望んでも、本当の仲間達には会えない」
だって、彼らは
「アレン達は、あたしの本当の仲間じゃないから」
たまたま教団にいるから、協力しているだけの事。
イノセンスという首輪がこの首に掛けられている限り、ここから逃げ出す事は出来ない。
だから、エクソシストとしてアクマと戦う、それだけの事。
「ラビだって、同じでしょ?」
振り返った先で、彼は一瞬目を見開き、そして口元だけで笑った。
裏歴史の記録のために、師と共にエクソシストとなったブックマン後継者。
彼らとて、本当に神の使徒になったわけではない。
記録のため、たまたま教団側についているだけ。
「そうだな。オレとお前は、同類さ」
ゆっくりと歩み寄ってきたかと思えば、片手でクライサの頭を一撫でし、ラビは少女に背を向けた。
部屋を出ようとしているらしい彼を、無意識に呼び止めようと口を開きかけた自分に気付き、発する間近の声を飲み込む。
今彼を呼び止めても、何を言っていいのかわからなかった。
扉の閉まる音が響いた後、再び静かな空間が生まれる。
彼女の周りを飛び回るゴーレムだけが、その羽音を鳴らしていた。
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