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02




「うそよ…っ」

リナリーの声が震える。
電話機に繋いだゴーレムは、それでも冷静なコムイの声を伝えた。

『咎落ちになったら助からない』

命が尽きるまで破壊行為を続けるか、アクマに殺される等外部から破壊されるまでは止められない。
咎落ちになった人間を、生きて助け出す事は不可能だ。

『咎落ちが終われば、スーマンのイノセンスは正常化して元に戻る。アクマに奪われる前に、イノセンスを回収するんだ』

コムイの口にした命令は、クライサの予想した通りのものだった。
沈黙するイルミナに肩を抱かれたリナリーが、兄の言葉に目を見開く。
どういう意味だ?
咎落ちが終われば、イノセンスは元に戻る。
集まったアクマ達の目的は、おそらくそのイノセンス。
奪われる前に回収する。
──正常化したイノセンスを。

「スーマンを見殺しにしろって言うの!?」

張り上げた声は、平坦な声に飲み込まれた。
教団の命令。
彼のイノセンスがハートだった時、それをアクマに奪われたらどうなるか、考えられないリナリーではない。
…………けれど。

「仲間なのよ……っ」





『スーマンはもう、そう思ってないかもしれない』



コムイの返答は、涙を零すリナリーを沈黙させ、冷静に話を聞いていたイルミナさえも瞠目させた。
どういう事だとイルミナが問うと、少しの沈黙の後、これはまだ極秘だったが、と些か重そうに言葉を紡ぐ。

『スーマンは教団を裏切った可能性がある』

先日……クライサとイルミナがレベル3のアクマに襲われ、怪我の治療のために任務を離れていた頃、任務に就いていたエクソシストと探索部隊の多くが襲撃に遭った。
殉職者は100人を超す。
その直前に、エクソシストから通信班へ一本の連絡があったのだ。
──現在のエクソシストと配置されている探索部隊の情報を教えてほしい、と。

エクソシストの持つ無線ゴーレムは、本部へ通信する場合、持ち主の声紋以外の声では通話出来ないようロック機能がついている。
調べた結果、連絡があったゴーレムはスーマンのもので、通話したのもスーマンだった。

『通常、任務でほとんど外部にいるエクソシストが、仲間の情報を聞く事は別に珍しい事じゃない。通信班は司令室へ通す事なく彼に情報を話したよ』

その直後、仲間達が襲撃された。

「…コムイ。スーマンが敵に情報を流したという証拠は?」

『無いよ。でも可能性はあった。そして今回の“咎落ち”……彼が敵に恐れをなして教団を売ったのなら説明がつく』

──スーマンが神を裏切ったのだと。

うそだ。
泣くリナリーを抱きしめてやりながら、イルミナは視線を横へ滑らせる。
彼女の無線ゴーレムが、静かに宙を飛んでいた。







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