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リナリーとイルミナがコムイに連絡を取り、咎落ちに関する有益な情報を得たら、無線ゴーレムを通じてクライサ達に伝えてもらうように言ってある。
だが、クライサは全く期待していなかった。
二人を信用していないわけではない、有益な情報など存在せず、ただ命令だけが伝えられるだけだと予測しているのだ。
イノセンスを回収しろ、と。

「時間はあまりかけられないと思う。さっさと勝負つけたいね」

咎落ちの両腕部分から放たれたエネルギー波が、また周囲のアクマを薙ぎ払った。
それでもまだ大群が残り、攻撃の機会を窺っている。

「あの尋常じゃない破壊力、相当大きなエネルギーを使ってるよ。だけどそれはイノセンスが持ってるものじゃなくて、ましてよそから持ってきたものでもない」

あの爆発的なエネルギーの源、それは、間違いなく。

「スーマンの生命エネルギーだ。イノセンスが、スーマンの命を削って撃ち出してるんだよ」

イノセンス──すなわち神が、スーマンの身体を蝕み殺そうとしているのだ。
咎落ちはつまり、神による裁きにほかならない。

「神が自ら裁くほどに怒りを抱く罪……考えられるのは、とりあえず二つかな。一つは傲慢、そしてもう一つは……背信」

資格なき者が神と同調しようとすれば、その者は咎落ちとなる。
太陽に近付きすぎた英雄が、蝋で出来た翼をもがれて地に落とされたように、神の怒りに触れた傲慢が裁きを下されたのだ。

そしてもう一方。
背信、すなわち裏切り。

「適合者であるスーマンが、彼を選んだ筈のイノセンスに裁かれる立場となった。……なら考えられるのは、スーマンが神を裏切ったって可能性だよね」

証拠は無い。
ここにあるのは可能性と、スーマンが咎落ちになったという事実だけだ。
本部に問わなければ……いや、問うても証拠などは見つからないかもしれない。
……いやいや、見つかろうと見つからなかろうと、どっちでも構わないのだ、クライサ的には。

「ま、裏切り者でもそうでなくても、リナリーに言ったからには助けるよ、スーマン!」

「……物好きだな」

「その物好きに付き合ってくれるくせに」

笑みに返るのは、やはり崩れない仏頂面。
それでもクライサは満足げに頷き、イノセンスを纏った右腕を高く掲げた。

「行こう、氷釧」

応えるように赤く輝くイノセンス。
空中に、スーマンの元へいざなうように現れた氷の階段を、躊躇いなく駆け上がった。





19:神の裁き







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