04 進んでも進んでも、一向に先頭集団が見えてこない。 四面楚歌状態の周囲から繰り出される攻撃を、いちいち避けたり叩き落としたりするのも面倒になってきた。 忘れてたが、こちとら病み上がりだ。 と、少しばかり気を抜いた途端、足場にしたアクマが身動ぎした事でバランスを崩し、さらに周囲から大きく口を開けたものが何体も迫ってきた。 あらヤバい。 暢気に零したその瞬間、腕をグイと引っ張られ視界が急速に変化する。 激しい風圧に閉じた目をゆっくりと開ければ、そこはすでにアクマの群れの外だった。 「大丈夫、クライサ?」 「リナリー!」 ありがとう、と返せばリナリーは頷き、そのまま地上を見下ろした。 イノセンス『黒い靴(ダークブーツ)』を発動した彼女のおかげで、今も空中にいるクライサとリナリーの落下はひどくゆっくりとしたものになっている。 着地時も、やはり大した衝撃はなく、繋いだ手を放された時にクライサはもう一度礼を言った。 「イルミナさんと神田は?」 リナリーは首を振る。 なんでも、クライサがアクマに攫われた後、彼女ら三人も同じようにアクマに捕まってしまい、あの大群の中に飛び込む事になってしまったのだと。 リナリーは自力で抜け出し、さらにクライサを助けてくれたわけだが、イルミナと神田がどうなったのかはわからないのだそうだ。 「……うん、まぁ大丈夫そうだよね、あの二人なら」 「うん……私もそう思う」 ほら、言ってるそばから。 見上げた先で、黒い雲のようなアクマの群れの中でいくつも爆発が起きている。 それがアクマの破壊によるものだという事は、同じ事をしてきたクライサとリナリーも承知していた。 ギャーギャー喚く声と爆音を暫し聞いていると、上空から何かが落ちてくる。 黒い。 神田だ。 クライサ達の立つ場所のすぐそばに降り立った(というか落ちてきた)彼は、随分な高さからの落下だというのに平然とした顔で立ち上がった。 ……と思った瞬間、その上にイルミナが落ちてきたものだから、もう拍手するしかなかった。 「さっきぶり、イルミナさん」 「ええ、さっきぶりね。クラちゃん、リナちゃんも。怪我はない?」 「大丈夫。ピンピンしてるよ」 「それは良かったわ。……あら、そんなところで伸びてどうしたの、ユーちゃん。鍛え方が足りないんじゃない?」 「…………」 神田の握り締めた拳がぶるぶる震えている。 文句を言うのもツッコミを入れるのも耐えている様子の彼に、やっぱイルミナさんにはかなわねぇな、とクライサはしみじみ思った。 [*前へ][次へ#] |