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02




クライサの怪我は町医者の元で完治したが、怪我の度合いと箇所から、一時ホームへ帰還しての検査を命じられた。
しかし、イルミナには新たな任務に着くよう命令が下されている(数少ないエクソシストが二人、二ヶ月もの期間休んでしまったのだから仕方ない)。
アクマに狙われる危険がある以上、本調子でないクライサを単独行動させないようにと、彼女らと合流したのがリナリーと、現在イルミナと剣の手合わせをしている神田の二人だ。
これから、イルミナと神田は指定された任務地へ向かい、クライサとリナリーはホームへ帰還する予定になっている。
リナリーは先の任務についてコムイに報告する件があり、かつ回収したイノセンスを持ち帰る役目があるため、適任と判断されての派遣だ。

で、現在クライサが入院している治療院の庭にて、エクソシスト二人による激しい攻防が繰り広げられている。
リハビリという名目でイルミナと神田が、それぞれのイノセンスである刀剣を打ち合っているのだ。
お互いに全力を出し合えるらしく、手合わせを始めて三秒で楽しげな笑みを浮かべた二人に、クライサは自分のことを棚に上げて苦笑した。

「あれ?」

暫くそれを眺めていたところで、ひとつ疑問を抱いてイルミナの名を呼ぶ。
ある程度間合いがあいていた事もあり、二人ともが揃って剣を下ろし、こちらを向いた。

「それ、どうしたの?ホームに置いてきたんじゃなかったっけ?」

「ああ、これ?」

クライサは窓枠に乗せていた両腕のうち、右手を伸ばしてイルミナの腰あたりを指差した。
そこにはいつものように、緋焔の鞘を取り付けるために作られたベルトが巻かれており、そこにさらにもう一本、剣が鞘ごと差されているのだ。
見覚えがある。
元の世界でイルミナが愛用しており、こちらの世界に来た時にも持っていた、緋焔と同じく赤い刀身を持つ剣だ。

「コムイに頼んでね、探索部隊の人に持ってきてもらったのよ。任務に出るといつも思ってたんだけど、やっぱりこれがないと落ち着かなくて」

「なるほどね。イルミナさん、いつもその剣持ってたもんね」

「ええ。それで、これ差したままでも戦えるか確認してたんだけど……どうかしら、ユーちゃん?」

「…………まあまあだ」

仏頂面の神田が呟くように答えれば、イルミナは上機嫌そうに笑みを深める(もはや『ユーちゃん』呼びを咎める気はないらしい。漸く無駄だと悟ったか)。
確かに、先ほどまでの手合わせを見る分には、イルミナが剣の重さに振り回されている様子はない。
それどころか動きのキレが増したように見えたのだから、さすがと言うべきだろうか。

「…………」

「クライサ?大丈夫?」

「え、何?リナリー」

「ぼーっとしてたように見えたから……まだ具合良くないんじゃない?」

心配そうに顔を覗き込んでくるリナリーに、そんな事ないよと笑みを浮かべて返す。
大丈夫、体調は万全だ。

──ただ、

『落ち着かなくて』

「…………」

そっと持ち上げた指先で、左耳に触れた。







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あきゅろす。
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