01
──……ぐすっ…うぅ…
声が聞こえた。
誰か、泣いてる。
──ふ、う…っうえぇ…
見渡すと、小さな人影が見えた。
こども。
小さな女の子が、両手で目をぐしぐしと擦りながら、嗚咽を上げて泣いている。
「どうしたの?」
泣いているこどもをあやすのは、あまり得意な方ではない。
だけど放っておけなくて、歩み寄ってみる。
地面に膝をついて目線を合わせれば、こどもはしゃくりを上げながらではあるが、あたしの目をまっすぐ見てくれた。
あのね、と小さな声を拾い、うん、と頷く。
──おにいちゃんが、どこかにいっちゃったの
「お兄ちゃん?」
こんな小さな子どもを置いて行ってしまったなんてどんな悪い兄貴だ、と思ったら、どうやらそのお兄ちゃんというのはこの子の双子の兄で、置いてかれたというよりはぐれてしまったらしい。
という事は、兄の方もこの子を探しているんじゃなかろうか。
「……兄妹かぁ」
弱いんだよねぇ、うん。
──おねえちゃん?
事情を知ってしまったからには放ってはおけない。
考える間もなく子どもの手を取ると、不思議そうにこちらを見上げた。
「一緒に探してあげる。お兄ちゃん、会いたいんでしょ?」
向こうが探してくれているかわからない以上、ただ泣いてるだけじゃ状況は変わらない。
繋いだ手を優しく引けば、子どもは涙に濡れた目をきょとんと丸くして、しかし直後「うん!」と笑った。
18:罪人の証
「あ、クライサ。目が覚めた?」
覚醒したばかりのぼんやりした頭で考える。
さて、何故ここに彼女がいるのだろうか。
「…………あー。そっか、そういえばそういう事になってたね、そっかそっか」
眠る以前にイルミナさんから聞いた話を思い出し、一人で勝手に納得していると、『彼女』ことリナリーが苦笑した。
「傷の具合はどう?」
「大丈夫。すこぶる快調だよ」
ただ少しリハビリは必要かな、と眠りすぎて鈍った体をベッドの上で伸ばす。
この二ヶ月余り、運動という運動を全くと言っていいほどしていないのだ。
固まった体をほぐし、戦闘の勘を取り戻す必要がある。
「…………」
「だからって、いきなりアレに加わろうとしちゃダメよ」
「わかってるよ」
いくらあたしでもそんな自殺行為はしません。
引き攣った笑みを浮かべたあたしの視線の先、ベッド脇にある窓の向こうでは、二人のエクソシストが楽しそうに剣を振り合っていた。
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